多和祥栄さん(左)の軍配に合わせ、稲の精霊と魂の三番勝負を繰り広げる「一力山」役の菅貞之さん=愛媛県今治市の大山祇神社で2024年6月10日、松倉展人撮影

 愛媛県今治市・大三島の大山祇(おおやまづみ)神社で10日、一年の豊作を祈願する「御田植祭」があった。瀬戸内しまなみ海道開通の1999年に復活した県無形民俗文化財「一人角力(すもう)」も、再開から節目の25年に。気迫あふれる取り組みに大きな拍手が湧いた。

 人の目には見えない稲の精霊と力士が相撲を取る一人角力。1707(宝永4)年の文書にも、旧暦の5月5日と9月9日に行われると記された神事で、「独り相撲」の言葉の由来の一つにもなった。力士のなり手がいなくなり1984年を最後に中断したが、しまなみ海道開通を機に当時の大三島町職員、菅貞之さんと多和祥栄(よしたか)さんが「伝統を守ろう」と手を挙げ、菅さんが力士「一力山(いちりきさん)」を、多和さんが行司を演じてきた。

 新型コロナウイルス禍で3年間の自粛期間があったが、2023年以降は春秋の相撲が完全復活。三番勝負で精霊が勝つことで春に豊作が約束され、秋に収穫を感謝する。合併で今治市職員になった菅さんは49歳、多和さんは51歳に。「先輩の力士は75歳まで務めた。私も頑張る」(菅さん)、「常に一番一番が勝負。精進します」(多和さん)と精霊に誓った。【松倉展人】

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