日本文学振興会は12日、第171回芥川・直木賞の候補作を発表した。両賞合わせて10人の候補者のうち、7人が初の候補入りで、フレッシュな顔ぶれとなった。選考会は7月17日、東京都内で開かれる。
芥川賞は、候補5人中、初ノミネートが4人を占めた。尾崎世界観さんはロックバンド「クリープハイプ」のボーカル、ギターを担当し、作家としても活動。第164回(2020年下期)以来、2回目の候補に挙がった。朝比奈秋さんはすでに三島由紀夫賞、泉鏡花文学賞、野間文芸新人賞などを受賞している実力派。坂崎かおるさんは24年、日本推理作家協会賞短編部門を受賞している。新進気鋭の詩人として知られる向坂(さきさか)くじらさんは、初めて発表した小説が候補に挙がった。松永K三蔵さんは21年に群像新人文学賞優秀作を受賞し、作家デビューしている。
直木賞は、柚木麻子さんが6回目のノミネート。候補作は、自身のブログ記事が炎上するラーメン評論家を主人公にした短編などを収録した小説集だ。コロナ禍を背景とした小説集で3回目の候補入りとなった一穂ミチさんは、22年に吉川英治文学新人賞を受賞している。初めて候補になった青崎有吾さんの作品は、既に本格ミステリ大賞、日本推理作家協会賞、山本周五郎賞の3冠を獲得している話題作。岩井圭也さんの候補作は自身初の歴史小説で、知の巨人・南方熊楠の生涯を描いた。麻布競馬場さんは21年にネット交流サービス(SNS)上で小説の投稿を始め、翌22年に初の小説集を刊行。2作目の今作が初候補になった。【棚部秀行、松原由佳】
候補者と候補作
<芥川賞>
朝比奈秋(43) 「サンショウウオの四十九日」新潮5月号 (初)
尾崎世界観(39) 「転(てん)の声」文学界6月号 ②
坂崎かおる(39) 「海岸通り」文学界2月号 (初)
向坂くじら(30) 「いなくなくならなくならないで」文芸夏季号(初)
松永K三蔵(44) 「バリ山行(さんこう)」群像3月号 (初)
<直木賞>
青崎有吾(33) 「地雷(じらい)グリコ」KADOKAWA (初)
麻布競馬場(32) 「令和元年の人生ゲーム」文芸春秋 (初)
一穂ミチ(46) 「ツミデミック」光文社 ③
岩井圭也(37) 「われは熊楠(くまぐす)」文芸春秋 (初)
柚木麻子(42) 「あいにくあんたのためじゃない」新潮社 ⑥
※50音順、敬称略、(年齢)は選考会当日現在、丸数字は候補回数
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