国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス、本部・パリ)は、北九州市による明治期の初代門司港駅(当時の名称は門司駅)関連遺構の取り壊し方針に対して「重大な懸念」を表明する緊急声明を25日付で出した。危機にひんした文化財を守るよう指摘する国際声明「ヘリテージアラート」発出も検討するとしている。日本イコモスによると、声明は事態の急迫に伴うもので異例。
遺構は、市が門司区に計画する複合公共施設建設に伴い、市が2023年9月から実施した埋蔵文化財発掘調査で見つかった。広さ約900平方メートルの敷地から、1891(明治24)年に造られた初代門司港駅舎の外郭や赤れんがの機関車庫基礎部分などが確認された。
日本の近代化の過程を物語る国史跡級の遺構だとして、日本イコモス国内委員会など16の学術団体が現地保存を求めているが、市は施設建設を優先し、今秋にも取り壊す方針だ。
会長名で出されたイコモスの声明は、遺構について、19世紀後半に鉄道と港湾開発で門司がアジアの重要都市となったことを踏まえ、国際的に重要なものであると評価。取り壊しの懸念が解消されない場合は、ヘリテージアラートの措置を取らなければならないとしている。盛山正仁文部科学相や武内和久北九州市長らに送付された。
日本イコモスの岡田保良委員長(国士舘大名誉教授)は「声明はイコモス本部が遺構の重要性と急迫した状況を理解してくれたもの。一方的な開発行政が国際的問題に発展しかねないことを北九州市は認識してほしい」と強調。武内市長は「現段階では声明の内容を確認できていないので、コメントは致しかねる」としている。
日本に対するヘリテージアラートの発出は過去に、出雲大社庁(ちょう)の舎(や)(島根)▽鉄道遺構「高輪築堤」(東京)▽再開発が進む明治神宮外苑(同)――がある。【伊藤和人】
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