TSKとJALのコラボ企画。今回は古いピアノの蘇らせる職人を客室乗務員でJALふるさと応援隊の佐藤美緒さんが取材しました。輝きを失ったピアノを修理し、新たな命を吹き込む松江市の親子2代の職人を紹介します。
訪れたのは松江市八雲町。緑に囲まれた山あいにある工房です。
JALふるさと応援隊・佐藤美緒さん:
ピアノがたくさんありますね。見るからに歴史を感じるピアノですね。
アートピアノ・井土和幸さん:
これは1860年製造のニューヨーク・スタンウェーのピアノです。
エプロン姿で出迎えてくれたのは、井土和幸さんと息子の洋志さん。親子2代のピアノ修理士です。和幸さんは、先代が立ち上げた修理工場「アートピアノ社」の2代目。この道50年を超える、国内でも指折りの修理職人です。3代目になる洋志さんに、先代から受け継いだ技術を渡そうとしています。
JALふるさと応援隊・佐藤美緒さん:
修理は手作業なんですね。
アートピアノ・井土和幸さん:
そうですね。これはチェコ製のピアノホリーのパーツです。フェルトやクロスとかこれは皮ですけど、1個ずつ(新品に)取り替えます。そうすると元の様に復活します。
今、和幸さんが修理を手がけているのは、約110年前にチェコでつくられたピアノ。
現地の学校で大切に使われてきましたが、傷みが進み、交流のある松江市の音楽家グループを通じて修理を依頼してきたそうです。
JALふるさと応援隊・佐藤美緒さん:
以前もチェコのピアノを修理されたと伺っています。
アートピアノ・井土和幸さん:
その流れで、後継として修理しています。
今回の修理の依頼には、一つのきっかけがありました。松江城近くの興雲閣に置かれたチェコ製のピアノ「ノヴィー」。8年前に和幸さんが修理し、新品のような豊かな音色が蘇りました。この修理の実績が、このピアノと和幸さんをつなぎました。古いピアノは手づくりの部品が多く、修理に使う部品はすべて和幸さんが手づくり。その数はピアノ1台で3000を超えるといいます。
特に白い鍵盤の表面に貼られた象牙の修復には高い技術が求められ、国内で対応できるのは和幸さんだけなのだそうです。
JALふるさと応援隊・佐藤美緒さん:
今回もかなりの時間がかかりそうでしょうか?
アートピアノ・井土和幸さん:
そうですね、同じく10カ月ぐらいは掛かります。時間も費用も掛かるんです。
修理には約200万円かかると見込まれ、依頼した音楽家グループは、クラウドファンディングでの調達を目指しています。
一方、3代目の洋志さんは、7年前に30歳でピアノ修理士の道を志しました。2代目の技術を受け継ぎながらグランドピアノの修理を手がけています。
ほぼ修理ができたというピアノ、洋志さんに弾いてみるように促された佐藤さんは、「120年前のピアノとは思えない、きれいな音です」と音色に感動したようです。
これまでに数え切れないほどのピアノを蘇らせてきた井土さん。修理に携わる中で、1台1台のピアノから何か感じるものがあるのだそうです。
アートピアノ・井土和幸さん:
その時代の技術者の思いが、全部目の前に見えるんですよ。これを考えた人はみんな天才だと思う。それを後世に、言葉と修理ができた製品で伝えることが、今の私の考えで、それを次の世代、息子に受け継いでもらいたい。
父の思いも受けとめながら、3代目として新たに挑戦していることがあります。
アートピアノ・井土洋志さん:
修理の仕方や思いをお客様に伝え、納得して買って頂ける新たな展示場を作っていて、これからそこを使って皆さんにピアノを見て頂きたい。
展示場はこの夏にオープンする予定で、ひとりでも多くの人に新たな命を吹き込んだピアノに触れ、職人の思いを感じてほしいと考えています。
JALふるさと応援隊・佐藤美緒さん:
井土さんが「ピアノに込められた先達のメッセージを受け取り、後世に受け継ぐことが使命」とおっしゃっていたのが印象的でした。今あるものを大切に使い、後世に受け継がれていくのはロマンがあり、さらにサステナブルでもあると感じました。
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