今年は映画「ゴジラ」の初公開からちょうど70年。代名詞ともいえる有名なテーマ曲をつくったのが、作曲家の伊福部昭(1914~2006)だ。鳥取にルーツをもつ伊福部の記念館が鳥取市郊外に1日、オープンした。

 伊福部自身は北海道で生まれ、少年期から青年期を現在の音更(おとふけ)町で過ごした。もともと伊福部家は因幡国(現在の鳥取県東部)の豪族で、因幡国一の宮である宇倍神社の神官を長く務めてきたという。伊福部の父は鳥取から関東を経て、北海道に移住したが、代々の墓は宇倍神社にある。

 「父も本籍は鳥取のままでしたし、先祖の墓を見て、『自分が帰るのはここだ』とも話していました」と長女の玲さん(79)は話す。伊福部は、鳥取市国府町にある「因幡万葉歴史館」の1994年の開館に際し、「因幡万葉の歌五首」という曲をつくっている。

 記念館がオープンしたのは市街地から車で30分ほど走った河内集落。伊福部の孫にあたる玲さんの長男帥(かしら)さん(55)が、縁あって集落に住まいを得たのがきっかけだ。

 コロナ禍もあって玲さんも神奈川県から移り住み、自宅に保管していた伊福部の資料や遺品の整理を始めた。すると地元から「記念館にしたら」との声があがり、帥さんや集落の人たちと相談して、展示することを決めた。

 集落の中に屋敷を譲り受け、伊福部愛用の大きな机と椅子、本箱などを置いて東京の自宅の書斎を再現。自ら客人をもてなしたコーヒー器具や直筆楽譜、収集した楽器なども展示している。

 伊福部の代表曲といえば「ゴジラ」などの映画音楽だが、たくさんのオーケストラ曲も作曲している。開館に先立つ6月1日には、記念館長に就任したバイオリニストの小林武史さんを招いてコンサートが開かれ、「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」などが演奏された。

 玲さんは「父が鳥取を愛したこと、ゴジラだけでなく多彩な純音楽の作曲家だったことを地元の人に知ってほしい。そしてできれば、鳥取で父のオーケストラ曲を演奏してほしい」。

 7月は7日まで、8月からは第1金曜日から4日間公開する。入館料は一般1千円。詳しい問い合わせはメール(akira@ifukube.net)で。

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