テレビ東京が昨年3月28日に放送した「激録・警察密着24時‼」で過剰な演出や不適切な内容があった問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会(小町谷育子委員長)は12日、放送倫理違反の疑いがあるとして、審議入りを決めた。今後、テレ東などに聞き取り調査を行うという。

 番組では、愛知県警が捜査していた「鬼滅の刃」の商品に関する不正競争防止法違反の疑いがある事案を取り上げ、「4人が逮捕された」と放送したが、その後に3人が不起訴となった事実には言及しなかった。

 また、VTRに登場した会社が「鬼滅の刃」のキャラクターを描いた商品を「中国へ発注していた」と放映したが、番組側は事実確認をしておらず、この会社から放送後に「(そのような)事実など無い」と指摘を受けたという。ほかにも、強制捜査後も、この会社があたかも「通信販売などで問題となった商品を売り続けていた」ように表現したが、実際には異なる第三者が通信販売をしていた。

 さらに、警察署内の捜査員同士の会話や会議の様子を捜査員らに再現させて撮影したのに、捜査の時系列に沿っているかのように番組を構成したという。

 この番組については、BPOの放送人権委員会も6月18日、不起訴に言及しなかったなどという苦情を受け、審理に入ると決めた。

 人権委は放送によって人権を侵害されたといった苦情を受け付け、当事者と放送局との話し合いで解決しない状況になっているなどの一定の要件を満たせば審理する。

 倫理検証委では、問題があると指摘された番組について、取材・制作のあり方や番組内容について、委員会の判断で調査する。

 人権委で審理入り、倫理検証委で審議入りするのは、沖縄の米軍基地反対運動を不確かな情報をもとに取りあげて問題になった、2017年放送の東京メトロポリタンテレビジョン(MX)の「ニュース女子」以来となる。

 テレ東の石川一郎社長は5月30日の定例会見で謝罪し、同種の警察密着番組について「もうやめます」と述べた。また6月3日、石川社長らが役員報酬を自主返納すると発表した。

 その後の朝日新聞の取材で、「摘発の日」とされた映像が実際には前日に撮影していたことが判明。同社の長田隆専務は6月27日の定例会見で「ケアレスミス」と釈明していた。

 テレ東は7月12日、倫理検証委の審議入りを受けて、「本事案を重く受け止め、審議に対して誠実かつ真摯(しんし)に対応し、協力してまいります」とのコメントを出した。(照井琢見)

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