隠し事やうそは小さいままで終わればいいが、転がり続けた先で本人の手に負えないほどに肥大してしまったりする。

 複雑な事情が絡み合っていたとはいえ、前半で杏が演じる童話作家が、車でひきそうになった少年を家へ連れ帰るあたりで「それはダメ、やっちゃダメ!」と脳内で警報音がけたたましく鳴りだす。その警報音が瞬く間にすぼまりを見せるのは、女性や認知症の老親との生活で、少年の笑顔があまりにも輝き出すから。挙げ句は、この疑似家族の存続方法を必死に模索したり、祈ったりしている自分がいる。

 児童虐待や認知症親族の介護問題と、昨今の社会問題を織り込みながらも、人と人が織り成す繊細な感情を丁寧に描いて温かい。女性のうそは転がり続けはしたが、少年の最後の言葉に救われて着地する。

(スターシアターズ・榮慶子)

◇シネマプラザハウスで上映中

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