日本に世界遺産が初めて誕生したのは1993年。そのひとつが鹿児島県の屋久島です。4月から番組「世界遺産」がリニューアル。新ナビゲーターの鈴木亮平さんがこの屋久島を現地取材した成果を、二週にわたり特別編として放送します。

標高2000メートル“洋上のアルプス” 屋久島は巨大な「岩の島」

まず鈴木さんも感じ入っていたのが、屋久島が巨大な「岩の島」であること。マグマが地中深くで冷え固まると花崗岩ができます。

屋久島の海岸の花崗岩
屋久島の海中の花崗岩

それが海底から隆起して誕生したのが屋久島です。海岸には花崗岩がずらっと続き、水中撮影すると海底からも花崗岩がそびえているのがよく分かりました。

縄文杉

一見すると緑豊かな屋久島ですが、長い年月をかけて岩の上に土壌ができて、そこに育った森が岩を覆い隠しているのです。有名な「縄文杉」など、大きな屋久杉も実は岩盤の上の薄い土壌に根を張り立っています。

屋久島の「千尋の滝」

「岩の島」という正体を実感できる場所のひとつが、「千尋の滝(せんぴろのたき)」。川や滝の流れが、渓谷の岩肌をむき出しにしていて、巨大な岩のかたまりを見ることができます。「尋」とは人が両手を水平に広げた長さのことで、その千人分もあろうかという大きさの岩盤。

屋久島の「千尋の滝」

番組ではドローンを使って撮影しましたが、水流によって削られた巨大な岩盤の姿をうまく捉えることができました。

まるで巨人が切った豆腐のような「トーフ岩」

輪切りにしたようなトーフ岩

地中深くで生まれた花崗岩には大きな圧力がかかっています。それが隆起すると圧力から解放されて、岩に亀裂が走ります。そこに雨水などの水分が入り込み、冬に凍ると膨張してさらに亀裂が広がり、ついには輪切りにしたような巨岩が誕生したのです。

このように花崗岩と深い関係のある屋久島ですが、違った成り立ちの島々も世界遺産になっています。

「ハロン湾」に浮かぶ2000もの島々・・・誕生の秘密

ハロン湾の棒付きアイスキャンディーのような奇岩

風雨などに浸食されやすいため、まるで棒付きアイスキャンディーのような形をした小島など、変わった形の島をたくさん見ることができます。

ハロン湾の「龍の眼」と呼ばれる島

番組では「龍の眼」と名付けられた島をドローンを使って撮影したのですが、上空から見ると島の湖がちょうど龍の眼のようで、ネーミングの由来が映像的によく分かりました。

火山活動によって生まれた世界遺産の島々

アメリカのハワイ島、日本の小笠原諸島、韓国の済州島など火山活動によって生まれた世界遺産の島々もあります。小笠原諸島の西之島のように誕生して間もない火山島では、溶岩だけで生命のない島にどのように植物が根付き、どのように動物がやってくるのか、つまり生態系が生まれていく過程を観察することができます。この点が評価されて世界遺産になったのがアイスランドの自然遺産「スルツェイ」です。

スルツェイに向かう前の撮影スタッフのクリーニングの様子

海域にもよりますが、火山島の周囲にはやがてサンゴ礁が生まれます。さらに火山島が沈降して海に没すると、リング状のサンゴ礁だけが残される場合があります。これを環礁というのですが、その中で世界遺産になっているのがフィリピンの「トゥバタハ海洋公園」。

フィリピンの自然遺産「トゥバタハ海洋公園」

ここには大小3つの環礁があって実に400種以上のサンゴが生息しています。番組で撮影したのですが、環礁の縁には、一気に100メートルも落ち込む断崖絶壁があり、そこでは巨大なカイメンなどを見ることができました。

トゥバタハの巨大なカイメン

環礁のリングの内側は穏やかな海のため魚などが暮らしやすい環境になっていて、海の生き物の撮影に適したスポットなのです。トゥバタハの場合は、こうした生態系と共に「リング状のサンゴ礁」という自然が生んだ景観美も評価されて世界遺産になりました。

トゥバタハのリング状になったサンゴ礁=環礁

日本の屋久島も、花崗岩と屋久杉が生み出す「自然美」が認められて世界遺産になりました。しかし屋久島の場合はもうひとつ大きな理由があります。それについては、また次回お伝えしたいと思います。

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