「この世界の片隅に」。これまで二度の映画化、実写ドラマ化を経てミュージカルで演じられます。キャストは日本ミュージカル界の実力派揃いで、主人公の浦野すずを昆夏美(こん なつみ)さん、大原櫻子(おおはら さくらこ)さんの2人がダブルキャストで演じます。
太平洋戦争下の呉に生きる人々の姿が淡々と丁寧に描かれ胸に迫る作品。全国各地を巡ったミュージカルが作品の舞台呉市でこの週末、全国ツアーの千穐楽を迎えます。
スタジオに昆夏美さん、そして大原櫻子さんにお越しいただきました。
まず、この全国ツアーということで、各地を回られてきたということですけれども、まずは昆さん、ここまでの反響をどのように感じていますか?
昆夏美さん:
日本初演の作品なので、始まった時はどういった反響をいただけるのかなと思っていたんですが、全国7カ所回って今回で8カ所目ですけれど、皆さんから本当にたくさんの拍手と温かいご声援をいただいて、本当に素敵なミュージカルが誕生したなという気持ちでいっぱいです。
Q:回を重ねるごとに思いも重ねていく形なのかなと思いますが、大原さんはいかがでしょうか?
大原櫻子さん:
いろいろな都市でやらせていただいてるんですけれど、毎回毎回お客さんの反応が違うので、演じてる側も毎回フレッシュにできて楽しませていただいてます。
Q:この作品は戦時下が舞台ということでありながら、日常を描くという作品です。アニメ化され実写映画化もされましたが、ミュージカルならではの部分だったり、逆にこれまでの作品と共通して大切にしている部分はあるんでしょうか?
昆夏美さん:
まず共通して大切にしている部分は、この原作の暖かい優しい温度感だったり、雰囲気は、ミュージカル化するにあたっても、原作に対するリスペクトを忘れずにカンパニー一同作ってきました。そういうところは同じかなと思うんですが、ミュージカルには歌があるんですね。今回、アンジェラ・アキさんが「この世界の片隅に」のためだけに全て描き下ろしてくださった楽曲が揃っています。原作の漫画とかアニメは、すずさんだったらこう自分で発語する言葉と心の心境で分かれていたりするんです。内面は漫画だったら吹き出しがなかったりとかアニメだったらナレーションだったりとかで、心情を吐露していると思うんですけど、ミュージカルではそういったところが音楽として表現されているなあっていうのをすごく感じます。そこがミュージカルならではのものになっているんじゃないかなと思います。
Q:昆さんこれまでミュージカルの舞台、数多くの舞台を踏まれてきたと思いますけれど、いわゆる海外が舞台のものが多いイメージがあるんですが、今回日本が舞台ということで、この辺りのこうお気持ちはいかがですか?
昆夏美さん:
日本で生まれたものももちろんあるんですが、比率として海外のものを翻訳する作品が多くて、やはり言語だったり、アイデンティティだったり、歴史だったりっていうものが作品に影響する上で翻訳する時にそこのすり合わせを一生懸命やって稽古して本番で上演していたんですけど、日本の物語で私たちの感性にすごくフィットする作品で、日本人の歴史っていうところでも日本人が作った作品の素晴らしさ、大切さを本当に感じていて、これからもこういう「この世界の片隅に」のような作品がどんどんできればいいなと思います。
Q:まさに日本人が日本の作品を演じるからこそ肌なじみの良さというか…
昆夏美さん:
すっと入ってくるし、お客様も日本の歴史として見ていただけるっていうか、親近感とはまたちょっと違うかもしれないんですけれども、遠い国の話でもないし、私たちの物語っていうところが日本で作られたものの醍醐味かなって思います。
Q:演じる上でそういう所を感じられたということは、見てる側ももしかしたら感じやすいというか、入りやすい部分があるのかもしれないですけど、大原さんはどうでしょう?この作品を演じるにあたって、どういうことを感じましたか?
大原櫻子さん:
今回、脚本・演出が上田一豪さんなんですが、上田さんの描かれる脚本は、すずが喋る言葉の一つ一つがやっぱりすごい強烈なメッセージを持ってるなと思っています。私も大事にしているセリフで「うちしか持っとらん記憶を消さんようにここで生きて行くしかないんですよね」っていうセリフがあるんですが、まさにこの作品をやる一役者としても、それが一個のテーマだなと思いますし、この作品が伝えたいことなのかなと思います。
Q:大原さんは以前のインタビューで「脚本を読んだときに思わず涙が出た」と拝見したんですけれど…
大原櫻子さん:
実は私、脚本を読んで泣き、稽古に入る1年前のワークショップの音源を聴いて泣き、アンジェラ・アキさんの音楽を聴いて泣き、3回ぐらい泣いているんです。本当に涙をした瞬間って3回とも違うんですけれども、一番感動的というか、すずさんとお姉さんの径子さんとのやりとりで、赦しを得るシーンは漫画でも泣けたんですが、改めてお芝居としてみたときにもう涙が止まらなくて。お芝居ではそのシーンを楽しみにぜひ見に来ていただければなあって思います。
Q:おふたりに伺いたんですが、随分と流暢な広島弁を披露していただきましたが、自分の感覚として広島弁は割といけてるなと思われますか?
大原櫻子さん:
実は今回ギリギリまで、方言指導の新谷さんという女優さんについていただいてたんですが、呉に行くんだったらちゃんとしたいという思いがあって、ギリギリまでチェックしていただいて、「いけるよ」っていう言葉をいただいたので、頑張ります!
Q:おふたりとも東京のご出身ですよね。この広島弁というのはどうでしょうか?
昆 夏美さん:
標準語をしゃべる私たちが思い浮かぶのって関西弁のイントネーションだったりとかする上で、脳がこうかなって思うものと違うっていう「ノッキング」を耐えて乗り越えて本番を迎えたので、その成果を見ていただければなと思ってますけど。
Q:呉というのは広島でも割とこう強めの地域ですので…
大原櫻子さん:
ちょっとお手柔らかにお願いします。
Q:どうですか?お気に入りの広島弁なんかはありましたか?
昆 夏美さん:
すずの台詞じゃないんですけど、晴美さんっていう子供が喋る「大和がおってじゃ」っていう子供の声と広島弁の融合の可愛さと言ったら、なんか“萌え”っていう感じです。「大和がおってじゃ」っていうのが好きです。あと、「おったんよ」というのは「いたんだよ」じゃなくて“萌え”だなと…。
Q:大原さんはいかがですか?
大原櫻子さん:
「やねこいね」っていう台詞が出てくるんですけど、最初台本読んだとき、「うん、どういうこと?」と思ったんですけど、とってもかわいくて私は好きです。私は個人的に昆ちゃんのしみじみニヤニヤしているのが目茶苦茶可愛いんですよ。
昆 夏美さん:
大原さんもメッチャ可愛いですよ。
Q:呉での公演を心待ちにしている人が多いと思うんですが、メッセージをいただけますか?
大原櫻子さん:
作品の舞台となっている呉でできるのは本当に奇跡ですし、この作品が始まる前から覚悟をもってやらなきゃいけないと思ってたので、非常に緊張感もあるんですが一生懸命精一杯真心を込めて努力したいと思います。
昆 夏美さん:
カンパニー一同5月からずっと公演をやってきて、ようやく呉で上演できるということで本当に最後の公演になります。あと3回しか「この世界の片隅に」は上演しないので、もしよろしければぜひ足をお運びください。お待ちしております。
ミュージカル「この世界の片隅に」
7月27日~28日 呉信用金庫ホール
チケット本当に残りわずかとなっていますが、配信も予定されているということです。
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