江戸時代の金の採掘地で、山が割れたような姿の「道遊の割戸」(手前)と、旧佐渡鉱山の遺構=新潟県佐渡市で2024年5月26日、本社ヘリから手塚耕一郎撮影
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 インド・ニューデリーで開催中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は27日、「佐渡島(さど)の金山」(新潟県)を世界文化遺産に登録することを決めた。ユネスコ諮問機関は申請内容の補足を求める「情報照会」の勧告を出していたが、朝鮮半島出身労働者に関する歴史を含む「全体の歴史」を現地の展示に反映するなどの対応を取ったことで「逆転登録」となった。

 ユネスコ諮問機関「国際記念物遺跡会議」(イコモス)は6月、構成資産のうち「江戸期より後の遺構が大部分を占める」として「相川鶴子(あいかわつるし)金銀山」にある北沢地区を除外することや保護エリアの拡大を要請。さらに韓国の主張を念頭に、追加的勧告として、江戸期に限らず全期間の金山の歴史を説明する展示戦略を策定することを求めた。

「佐渡島の金山」を巡る経過
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 日本はこれらの勧告内容に対応。歴史の展示については、「相川郷土博物館」に金山の労働者に朝鮮半島出身者を含むことや、日本人に比べ従事する作業が過酷だったことを示すパネルなどを新たに設置する。

 佐渡島の金山を巡っては、韓国が日本の植民地時代に朝鮮半島出身者の強制労働があったとして、登録に反発してきた。世界遺産の登録には21の委員国全ての賛成が原則必要で、日本政府は委員国の一つである韓国と水面下で調整。イコモスの勧告を受け入れることで合意に至った。

 日本の世界文化遺産登録は2021年の「北海道・北東北の縄文遺跡群」以来で21件目となる。佐渡島の金山は「西三川(にしみかわ)砂金山」と相川鶴子金銀山の2鉱山で構成される。世界的に機械化が進んだ16~19世紀に手工業による純度の高い金の生産システムを発展させ、17世紀には世界最大級の金生産地となった。日本政府は「手工業による金生産システムの最高到達点」とし、遺構が良好な状態で保存されている点を強調していた。【西本紗保美】

世界遺産

 1975年に発効した世界遺産条約に基づき、ユネスコが人類共通の財産として登録する。歴史的建造物や遺跡が対象の文化遺産、貴重な生態系などの自然遺産、文化と自然の要素を併せ持つ複合遺産の3分野がある。締約国が候補を推薦し、締約国の代表で構成する世界遺産委員会が諮問機関の勧告を踏まえて登録の可否を決める。開発などで遺産の価値が損なわれると登録を抹消される場合もある。現在の登録総数は1199件で、内訳は文化933、自然227、複合39。日本では「法隆寺地域の仏教建造物」(奈良県)など文化遺産が20件、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」(鹿児島、沖縄両県)など自然遺産が5件ある。

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