舞台は19世紀のイタリア。7歳のユダヤ人の少年エドガルドが赤子の頃、キリスト教徒による洗礼を受けたという理由で親の元から連れ去られた。洗礼を受け、クリスチャンとなった子どもは、たとえそれが親であっても、他教徒の人間が育てることは許されない。神のお導きであると譲らないローマ教皇の命により、親子は引き離された。
今から200年近く前の実話に「クリスチャンになれば息子と暮らせるなら、クリスチャンになると言えばいいのに」と気楽にうそを思いつく子羊の罪深さをあざ笑うように、エドガルドも、彼の両親も、善良で無垢(むく)で美しい。権力欲に信仰が絡みつき、抑えの効かないローマ教皇の、不条理でまがまがしい姿もまた、何かをあざ笑っているよう。
神を祭る神殿、そして信仰が、圧倒的な美の力を宿し、映画の中に君臨している。(桜坂劇場・下地久美子)
◇同劇場で26日から
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