放送中のNHK連続テレビ小説「虎に翼」のロケ地となった名古屋市市政資料館(東区白壁1丁目)が、人気を集めている。4~7月の4カ月間で7万人を超える人が訪れ、過去最多だった前年同期の2.5倍に。戦前の法廷を再現した部屋や名古屋市の歴史の展示など、昔と今の名古屋を知ることができる。

 「虎に翼」は、日本初の女性弁護士のひとりで、その後裁判官となった三淵嘉子さん(1914~84)をモデルにした作品で、主人公の猪爪寅子を俳優の伊藤沙莉さんが演じる。社会進出が阻まれた時代に奮闘する女性たちの姿を描き、大きな反響を呼んでいる。

 市政資料館はドラマの東京編で、東京地方裁判所として使われた。劇中で寅子を含む「明律大学女子部」の学生が大勢で裁判を傍聴し、中央階段を全員で降りるシーンは印象的だ。このほか名古屋市役所も、寅子たちが通う大学の校舎として使用されるなど、市内各所がロケ地となっている。

「嫌な気持ち」になったときドラマが力に

 視察で名古屋市市政資料館を訪れた兵庫県伊丹市議の高橋有子さん(45)と高塚伴子さん(64)は、男女共同参画や子どもの支援に取り組む。

 「日々女性というだけで嫌な気持ちになる時があるけど、寅子が背中を押してくれる。資料館も素敵で、市政史を知れてよかった」

 市政資料館は、1922年に当時の名古屋控訴院・地方裁判所・区裁判所として建設され、その後の名古屋高裁・地方裁判所が79年、現在の中区三の丸1丁目に移転するまで司法の中心だった。

 三淵さんは52年から3年5カ月の間、名古屋で初の女性判事として名古屋地方裁判所で実際に勤務していた。

ロケ地はネオ・バロック様式、国の重要文化財

 ネオ・バロック様式で造られた華やかな外観や、ステンドグラスのある中央階段室が見どころだ。ステンドグラスは一見鮮やかな花かごに見えるが、「公正な裁判を客観的な基準で行う」という意味を込めててんびんにのせた二つの皿が描かれている。84年に国の重要文化財に指定された。

 市民から貴重な文化遺産を残してほしいとの声があり、89年に資料館へと生まれ変わった。現在はパブリックスペースとして、市政や司法に関する展示や季節で入れ替わる一般展示の観覧、市民団体の会議や個展の会場として利用できる。名城公園の四季折々の自然も楽しめる。

 当時使用されていた留置所も地下にそのまま残っており、実際に見ることができる。作品によく登場した中央階段で写真を撮る人が多いが、留置所も人気のスポットだという。

 副館長の川口輝佳さんは「名古屋の歴史や戦前の裁判所を知ってもらえるいい機会。ぜひ気軽に訪れてほしい」と話す。

 資料館では、企画展を開催している。戦前の法服の実物や三淵さんが関わった判決文も展示され、木・金・土曜には再現した法服を実際に着用することもできる。今月25日まで(月曜、第3木曜は休館)。無料。(川西めいこ)

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