2018年放送の『ブラックペアン』に引き続き、物語の核心を動かす重要なキーマンとして、現在放送中の『ブラックペアン シーズン2』に登場しているキャラクター・佐伯清剛。前作でも、自身の野望のために存在感と威厳を放つ人物として描かれていた佐伯は、今回、東城大学医学部付属病院病院長という立場を得、さらに、日本の研究医療の頂点である「日本医学会」会長の座を狙うという目的を持っている。
そんな役柄を6年ぶりに演じている内野聖陽さんは、どんな思いでこの人物に向き合っているのか。世界的に有名な“佐伯式手術”の生みの親であり、病院長に就任した今も執刀医としてオペを行っている有能な外科医でありながら、経営の手腕も振るう。そんな佐伯の真理を理解しながら演じる内野さんが抱く彼に対する思いには、深いリスペクトが込められていた。
新たな気持ちで挑む6年ぶりの佐伯清剛
──『ブラックペアン シーズン2』で6年ぶりに佐伯教授を演じることになり、どんな佐伯に会えるかなど、期待はありましたか?
今回は、主人公の天城(雪彦)のキャラクターが『ブラックペアン』の渡海(征司郎)と全然違っています。ですから、僕が佐伯を演じるにあたっても、気持ちを新たにやっているつもりなんです。
二宮(和也)さんが演じる天城の人間性に対し、佐伯がどんな思いでいるかとか、そこには新たに関係性を作っている感覚があるんです。
そういった意味で、前作とは向き合い方が違います。そういう感覚はすごく新鮮ですね。というのも、渡海と佐伯の関係性は、ギスギス…は言い過ぎかもしれませんが、結構ハードだったように思うんです。天城とのそれは、慣れ合いはありませんが、どこかお互いを信頼し頼っている古い友人のような…。どこか疑似親子のような感じが初めから匂いますよね。
それにしても、佐伯が自分でゴールドコーストから引っ張ってきたわりには、天城の扱いに手こずっているのがおもしろいなとも思いますね(笑)。
──佐伯教授は立場的にも6年前と大きく変化がありました。前回と違う取り組み方をした部分はありますか?
今の佐伯は、東城大の病院長になり、次は全日本医学会の会長になるという野望を持っていますからね。
さらに、心臓外科に特化した専門病院を作るという計画も進めている。大きな野望に向かって邁進している姿は、佐伯というキャラクターにとってとても大事な要素だと思います。
物語を背負っている、佐伯の“義”
──佐伯教授は、 天城雪彦という“禁断の果実”に手を出してまで自身の野望を叶えようと画策します。内野さんは、佐伯教授のこのような姿勢をどうお感じになりますか? また、同じような経験をされたことはありますか?
佐伯には、天城という悪魔を東城大の体のなかに入れてまで、達成したいことやどうしても欲しいものがあります。
「役柄と自分の共通点は?」と聞かれることがありますが、佐伯清剛に関しては自分と似ている部分はあまりないんじゃないかな(笑)…あ、ありましたね。佐伯は東城大に揺さぶりをかけて混乱を楽しんでいるところがあります。常に、現状に満足しない人、そういう意味では自分に似ているところはあると思います。
野望のために禁断の果実に手を出すということが自分にあるかといえば、どうでしょう。しいて言えば、役者という道を志していること自体が、禁断の果実に触れていることかもしれませんね(笑)。
──かなり強いキャラクターの佐伯ですが、演じていて、リスペクトできる部分はありますか?
演じながら、佐伯に対して日々いろいろなことは感じていますけど、義理堅い人なのかなとは思いますね。
『ブラックペアン』では、自分のために罪をかぶって東城大を去っていった、渡海征司郎の父・渡海一郎先生の思いを無にすることなく生きているところとか。“義”を持っていて、それをきちんと受け継いで生きてる人なのではないかと思います。
だから、自分の野望だけで突っ走ってるふうに見えるけど、実はそうではないっぽいぞという思いは視聴者の皆様も感じているのではないかな。
なので、佐伯っていうキャラクターも、このドラマの謎解きの一つというか、物語を背負ってる大きな立ち位置だと思っています。
“佐伯清剛”という名に感じるインスピレーション
──今の時代、人間関係の構築にはとても気を使う局面が多いこともあり、人の懐に入って“義”を貫くことが難しい局面も多いと思います。そんななか、佐伯が重んじている“義”が物語を左右しているともお感じになりますか。
たしかに、人間関係で考えると、佐伯にはかなり強引な面がありますよね(笑)。
「病院長命令だ」と部下に告げてむりやり物事を進めることも多々ありますし、暴君的な部分がある。病院長としては暴君と言えるかもしれません。でも、佐伯のそういった言動がのちのちどういう展開を見せるかという部分も含め、それがまたこのドラマのおもしろさでもあるんじゃないかなとは思います。
『ブラックペアン』のときは演出の影響もありましたけど、佐伯の描かれ方が独裁者のようだった気がするんですね。みんなで起立して拍手しちゃったり、大勢を引き連れて歩いたりね(笑)。
ただ、『ブラックペアン シーズン2』では、演出に西浦(正記)さんが入って雰囲気がかなり変わったと思います。西浦さんはすごく繊細というか…物語の見せ方が細やかで色っぽく、スムーズに入っていける描き方をされる。
同じフィクションでも、前作とは撮り方や物語の切り口がかなり違うのが、演者としてもすごくおもしろい。視聴者の皆さんにとっても、そういった演出面もおもしろさにつながるのではないかと感じますね。
──その環境において、『ブラックペアン シーズン2』で佐伯を演じるにあたり、内野さんが大事にされていることは?
ブラックペアンの謎や、天城と渡海がどう関係しているのかなど、終盤に向けてさまざまな秘密が解き明かされていきます。
このドラマにとって、野望に向かって進む佐伯の姿は重要な要素ですが、なぜそこまでして新病院を建てたいのか、なぜ医学界のトップに立つことにこだわるのか、そこに種明かしがありまして。
その先に進めていくためには、佐伯というキャラクターに説得力がないといけないなとは常々感じています。ですから、彼の夢や野望を作り物ではなく、“本当に欲しいもの”として届けたいんですね。
それと、このドラマは、高階をはじめ、いろいろなキャラクターが敵陣と味方に出入りしているわけです。佐伯は、その間を行き来しながら、清濁併せ呑む立ち位置といいますか。そういったキャラクターとして存在していたいと思っています。
非常に懐の深い人物だとも感じてて。そう考えると、“佐伯清剛”という名前そのものにインスピレーションをもらえるところがあるんですよ。剛腕を持った清くて力強い人。
たとえば、佐伯は、日本の医学界、特に心臓外科に対する志がすごく高い人だと思うんです。人の命を救うことに対する志を誰よりも大事にしている。
ただ、どこかギラギラしている部分は大事にしてほしいとプロデューサーからは言われておりまして(笑)、清い部分や温かい人間性があまり表に出ないようにはしています。
剛腕バリバリで前に突き進むエンジンは持っているからこそ、その奥の方にあるヒューマニズムを感じさせないようにはしたいんです。本音の見えない人物の方がおもしろいですものね。
心臓外科医の頼もしさ、カッコよさを感じてほしい
──終盤に向け、さまざまな謎が明かされていくなかで、佐伯の違う顔が見える見どころもありそうでしょうか。
今後、いろいろな謎解きが待っていますので、ドラマティックに見せるためのキャラクター作りは大事にしていこうと思っています。
佐伯は、天城を東城大に連れてくる人間ですから、ここから先も天城との関わりが一番大きいですが…彼に理解を示しながらもどこか手を焼いているという、思春期の息子に手を焼くお父さんみたいな部分もありますよね(笑)。そんな天城と佐伯の関係性だったり、徐々に明かされていく真実が大きな見どころの一つになっていきます。
なおかつ、医療全般に言えることですが、人の命を救う佐伯たち心臓外科医の頼もしさですね。そこも非常に見応えがあって、かっこいい男どもがいるなと思っていただけることも、この作品の見どころではないかと思うんです。
若い心臓外科医たちの戦い、それぞれの人生にまつわる謎、そこにも大きな見せ場があるのではないかと思いながらこのドラマに携わっています。
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