俳優で演出家の串田和美さん(82)が主宰する「フライングシアター自由劇場」の新作「あざみの花咲く頃」の上演が23日、東京都杉並区阿佐谷南1のシアターシャインで始まった。20代後半の若手の俳優、アーティストによる不条理劇だ。
「あざみの花咲く頃」はドイツの劇作家、ヘルマン・メールスの初の戯曲で1958年、当時の西ドイツで発表された。6人の役者が、刑務所を舞台にした芝居をつくって「一花咲かせよう」と試行錯誤する物語。劇中劇では、看守1人と囚人5人が登場し、道理では割り切れないそれぞれの心情が吐露される。
演出と脚色を手がけ、自身も看守役で出演するのは、串田さんの息子の串田十二夜さん(25)。「この作品を書いた時、メールスは28歳。ベルリンの壁ができる3年前のことで、冷戦下の空気がにじんでいると感じた」と話す。一方、「自分たちが生きるいまの日本は物質的には満たされるが、『出口が見えない』という閉塞(へいそく)感が漂う。時代は異なるが、若者たちが感じるもやもやした気持ちを表現したいと思った」と言う。
フライングシアターは、昨春まで長野県松本市の「まつもと市民芸術館」の芸術監督を務めた和美さんが「多様な人々が集い、舞台を創作する場をつくろう」と始めた演劇企画創作カンパニーで、昨年末から公演活動が始まった。同作を監修した和美さんは「今度の舞台はキャスト、スタッフとも若手と組んだ。若者たちの創作の場を提供するとともに演劇の新たな可能性を探っていきたい」と語る。そのほかの出演は、小日向春平さん、中田翔真さんら。
25日まで。詳細はフライングシアター自由劇場のホームページ。【明珍美紀】
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