秋田県にかほ市象潟町の集落に古くから伝わる「鳥海山日立舞 横岡番楽」。他の地域にはない魅力ある番楽を絶やすまいと奮闘する人たちの様々な思いに迫る。

鳥海山の麓にあるにかほ市象潟町の横岡集落。

自治会館の倉庫から鳴り響く太鼓や笛の音。集落が守り抜いてきた「鳥海山日立舞 横岡番楽」の練習が行われている。

地元の人によると、1640(寛永17)年に横岡集落に伝えられたとされていて、毎年8月13日と15日に五穀豊穣や家内安全、先祖供養のために披露されている。

舞いとおはやし、太鼓や笛などで演じられる横岡番楽は、おはやしの拍子が速く力強い三拍子と、静かな五拍子の演目があるのが特徴だ。

中でも「団七」と呼ばれる演目は珍しく、父親の敵討ちを行う姉妹の戦いの話で、見応えがある。

 鳥海山日立舞横岡番楽保存会・齋藤朝次郎会長:
「他の地域にないようなことをやっているから、すごく自分たちとしては魅力だと思う」

集落に住む子どもたちも練習に参加。中学生の齋藤想さん(12)は、一番初めに披露される演目を舞う。

 齋藤想さん:
「お父さんが舞っていて、憧れて去年から始めた。大きく手を広げたり回ったりするところが醍醐味(だいごみ)だと思う」

2024年は小学生3人が初めて参加した。「三人立(さんにんだち)」と呼ばれる演目を一生懸命に練習していた。

番楽を始めようと思ったきっかけについて、佐藤快晟君(6)は「お父さんがやっていたから」と、齋藤崇希君(7)は「獅子舞を見て楽しそうだったから」と教えてくれた。そして、山崎智清君(8)は「難しいけどいろいろなことが学べて面白い」と話す。

 鳥海山日立舞横岡番楽保存会・齋藤朝次郎会長:
「どうしても踊りたいということで、やらせてみようと。好きな子どもたちにはやらせたい」

横岡集落の出身者以外にも参加した若者がいる。

集落内にあるゲストハウス「麓(ろく)ます」が、今年初めて稽古と本番の舞台を体験できる宿泊プランを企画し、大阪などから来た3人の大学生がプランを利用した。
(※麓ますの「ます」は「ます記号」)

 ゲストハウス麓ます・中山功大さん:
「集落では、人が外から来て舞うということは一回もなかった。人がどんどん減っていく中で、続けていくためには外から人が来て参加することが大事だと思っている。地域との垣根がなくなることを僕たちは“醍醐味”と言っていて、この醍醐味を観光コンテンツとして味わってほしい」

そして迎えた本番当日。

おはやしとともに中学生の齋藤さんが演じる演目が始まった。そして、次々と優雅で力強い舞が披露された。

初めて参加する小学生の「三人立」の順番。少し緊張したが、無事に終えることができた。

 山崎智清君:
「本番、ちゃんとできてうれしかった」

 齋藤崇希君:
「成功してうれしかった」

 佐藤快晟君:
「またうまくできるように、三人立とかいろんな演目に挑戦してみたい」

 鳥海山日立舞横岡番楽保存会・齋藤朝次郎会長:
「教えたことをちゃんと守ってくれて、うまくできたということで大変喜んでいる。将来大人になってからも続けてもらえれば、会長としては大変うれしい」

鳥海山日立舞 横岡番楽。人から人へと、思いも乗せて受け継がれていく。

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