書店ならではのインクの匂いを感じる店内には、約3000冊の本が並びます。8月31日、仙台市で地域に愛された書店がまたひとつ姿を消しました。
青葉区五橋にある「塩川書店五橋店」。店主の塩川祐一さん(61)です。
塩川祐一さん
「きょう閉店なので雑誌は1週間入ってきていない。それでこんな状態ですけど、通常であればたくさん本があってそれを整理しながら」
この日が、最後の営業日。訪れた馴染みの客は「今度からどこに買いにいけばいいんだ」と閉店を惜しんでいました。
塩川書店の始まりはさかのぼること62年前。父親の久治さんが若林区河原町で始めた書店がルーツとなっています。塩川さんにとって、幼少の頃からそばにあった「書店」という空間。2001年、五橋に店を移転しましたが、電子書籍やネット販売などに押され、経営難から父の代から62年間続いた店を閉じることになりました。
塩川祐一さん
「途中でできなくなるのは経営、そして時代に自分は愛されなかったとつくづく思うので。本当はあと10年15年やりたかったのが気持ち」
塩川書店を有名にした出来事があります。2011年の東日本大震災直後、本の入荷が止まっていた時、塩川さんは知り合いから譲り受けた週刊少年ジャンプの最新号を、自由に回し読めるようにしたのです。このエピソードは新聞記事となり、ネットを通じて全国的に大きな反響を呼びました。
塩川祐一さん
「ニュース見ても怖いニュースばかりだし、度重なる余震に震えているので、漫画を読ませれば元気になるんじゃないかなと思って…。最後の方はボロボロになったのをセロハンテープで補強して、何人もの手をわたってそうなった。本当に“伝説のジャンプ”だと思う」
近くに住む幕井成亜さん(26)も“伝説のジャンプ”を読んだ一人です。
幕井成亜さん
「支えにはなりましたね。読んでいる間は怖いことを忘れられていたので。どれだけオンラインが進んでも書店とか、自分の家の近くにある町の本屋さんは大事だなと思っている」
幕井成亜さん
「20年以上本当にありがとうございました」
塩川祐一さん
「どんな言葉より今こうして来てくれるのが一番うれしい。君たちを見ているとやめるっていうのがぶれる。やめたくないって思う。みんなの成長がもっとみたいなって思うね」
多くの人が訪れ、最後の瞬間を見守りました。
塩川祐一さん
「本というのは必ず人生に寄り添って影響を与えて、ずっと一緒に人生を歩む。それはやはり紙の本にしかできない。オンラインとか電子書籍にはできないと思う」
大人も、子供も、多くの人たちを笑顔にした書店が、その歴史に幕を下ろしました。
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