秋田県に200年以上前から伝わる絹織物の「秋田八丈」。この伝統工芸品の制作技術を次の世代に伝えようと奮闘する北秋田市の人たちにスポットを当てる。
秋田を代表する伝統工芸品の一つ「秋田八丈」。約200年前に東京の八丈島から伝わった草木染の絹織物で、黒と黄色、そして「とび」と呼ばれるこげ茶色など、深みのある色彩が特徴だ。
秋田八丈を制作する工房は、明治頃には20軒以上存在したが、時代の流れとともに減少し、2003年には最後の職人だった秋田市の滑川晨吉さんが廃業し、途絶えた。
それから3年後、伝統を守ろうと、かつて滑川さんの元で腕を磨いていた奈良田登志子さんが地元の北秋田市で工房を開き、製品づくりを再開した。
はまなす工房・奈良田登志子さん:
「誰かに『やれ』と言われているような錯覚で始めたらうまくいった。染めだけは自信があった」
工房の機材は滑川さんから譲り受けた年代物で、故障も度々あったが、奈良田さんは修理をしながら伝統を守り続けた。
さらに奈良田さんは、コロナ禍には秋田八丈のマスクを手がけたり、これまであまり使われてこなかった明るい色彩を取り入れたりと、新たなことにも挑戦してきた。
奈良田登志子さん:
「小物でも作ると褒めてもらえる。求めている人のことを考えて作っている」
こうした個性あふれる製品が話題を呼び、北秋田市は2016年度に、秋田八丈をふるさと納税の返礼品に採用した。
北秋田市総合政策課・佐藤春生さん:
「ネクタイやコインケースなど、日用品も数万円の寄付額で提供している。申し込みの件数自体は多くないが、秋田八丈の魅力を感じられる返礼品になっている」
時代の変化に合わせながら伝統をつないできた奈良田さんは、2023年から次の世代の育成に取り組んでいる。
秋田八丈の美しさにほれ込み、岩手から移住してきた藤原健太郎さんは、2023年に秋田八丈の新たな担い手として北秋田市の地域おこし協力隊に採用された。
はまなす工房・藤原健太郎さん:
「インターネットで伝統工芸を調べていたとき、秋田八丈の“とび色”を見た瞬間に関わってみたい、やってみたいと思った」
工房を訪れるまでは裁縫をすることもなかったという藤原さんだが、今は奈良田さんの元で日々腕を磨いている。
指導にあたる奈良田さんは「私より優秀になるんじゃないかとちょっと心配なの。まだ1年目なのに落ち着きがあるの」と話す。
藤原さんは、地域おこし協力隊の任期が終わった後も北秋田市に残り、奈良田さんと制作を続けることにしている。
藤原健太郎さん:
「新しい商品開発もしたいし、反物も着物として海外に広める活動もしてみたい。応援してくれる人が多いので、プレッシャーに感じないように挑戦しながら、皆さんと協力してやっていきたい」
地域が誇る伝統工芸品「秋田八丈」。さまざまな人の思いを紡ぎながら、伝統の技が受け継がれている。
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