<カビの発生が顕著>
<修復すべき大きな変形あり>
大阪府が美術品を地下駐車場に置くなど、ずさんに管理していた問題が発覚して1年あまり。専門家チームがまとめた最終報告では、作品の劣化ぶりが改めて浮き彫りになった。安定的な保管場所はいまだ決まっておらず、専門家からは「大阪府の対応には芸術への敬意が感じられない」と厳しい声が上がる。
大阪府では昨年、所有する美術品105点を庁舎の地下駐車場に6年にわたり置いたままにしていたことが発覚。「作品の活用」として屋内外に展示していた作品も劣化がみられるなど、適切な管理が行われていなかったことが明らかになった。専門家チームは最終報告で、作品を継続的に管理するための体制を整備することや、現在は府有施設に仮置きされている大型作品について安定的な保管場所を確保することを求めた。
一方で最終報告には「日常的に利用者が多い施設における活用」や「より幅広い場所での展示の可能性」を検討すべきだとも記述。報告を受けた吉村洋文知事も「僕はできるだけ多くの人の目に触れるようにすべきだと思っている」と強調し、「安定的な保管場所」の具体策について言及はなかった。
国公立の美術館で約30年学芸員を務めた平井章一・関西大教授は「大阪府の一連の対応には作品や作者、ひいては芸術全体への敬意が感じられない。作品を『モノ』としか見ていないのではないか」と憤る。吉村知事は事態の発覚時に「新たなハコモノはつくらない」と表明したが、「根本的に考えを改め、しかるべき保管場所をつくるという議論に踏み込まない限り、『活用』の名の下に作品を外に出しては傷つけるというループから脱することができないだろう」と警告する。
もし適切な保管場所を整備できないなら、他施設への移管も検討すべきだと平井教授は言う。「パブリックコレクションを持つということはお金のかかることであり、費用対効果で考えられる話でもない。作品を生かし、後世に伝える使命を果たせないなら、手放すことも考えるべき時ではないか」と話す。【山田夢留】
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