世界文化遺産への登録を目指してきた「飛鳥・藤原の宮都」(「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」から名称変更)が9日、国の文化審議会の答申で新たな国内推薦候補に決まった。順調に進めば、2026年夏の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会で登録が決まる。国の暫定リストに記載された07年から足かけ17年。悲願成就が近づき、地元では喜びと期待の声が上がった。
「飛鳥・藤原」は奈良県明日香村、橿原市、桜井市の宮殿跡や古墳などの22件からなる。古代の朝廷が中国大陸と文化・技術面で交流しながら、国内初の中央集権国家を完成させていく過程を示す文化財と位置づけられる。ライバルと目されてきた彦根城(滋賀県)が、時間のかかる「事前評価制度」を受け入れたことで「飛鳥・藤原」が先に推薦されるとみられていた。来年1月中旬をめどに正式な推薦書をユネスコに送り、来夏のユネスコ審査機関・イコモスの現地調査を経ての登録を目指す。
候補決定を受けて3市村の首長と山下真知事は県庁で記者会見し、「大変大きな前進。やっとここまで来れた」と喜びを語った。
地元は、ユネスコに提出する推薦書の素案を作る必要があり、県と3市村でつくる推進協議会は20年以降、文化庁と調整しながら素案を4回提出。23年に文化審から資産保護について指摘を受けた後は、構成資産数の見直しや藤原宮跡の史跡指定化などの対策を進めてきた。
世界遺産に登録されれば、北和に比べて観光資源の乏しい中南和地域にとって観光の核となる。山下知事は「登録までの2年間で県もハード・ソフトの整備に取り組み、もてなす態勢作りや周遊ルートの整備も考えていきたい」と意気込みを示した。
構成資産の大半が位置する明日香村の森川裕一村長は「一番重要なことは地元の人の心が豊かになり、誇りを持てるようになることで、世界遺産登録はあくまでも手段。この地域だけでなく、吉野や宇陀、葛城など周辺の魅力を知ってもらう契機になれば」と話した。【稲生陽】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。