火事で全焼しながらも再起を決めた人気飲食店があります。JR仙台駅前で“せんべろ通り”の人気店として、親しまれていた「丸昌」。東日本大震災をきっかけに仙台に根付いた店は、まちへの恩返しを誓い、来年3月に再オープンします。

JR仙台駅西口、青葉区中央1丁目にある小さな路地。低価格の居酒屋や立ちのみ屋が軒を連ね、1000円でべろべろに酔える“せんべろ通り”と呼ばれています。

その一角にある空き地。かつてここには“せんべろの聖地”として親しまれた店がありました。「もつ焼専門丸昌」です。田楽30円、たこ焼き100円など、安くておいしいメニューを揃え、人気を集めました。

通りかかった人は
「『丸昌』は最高の店だよ、酒飲みにとっては。こんなにいい店なかった」「よく行っていました」「雰囲気も古い感じで、串とかも1本80円とか安くておいしかった」

そんな愛された店で、おととし12月…。

記者リポート
「火災現場は仙台駅の西口にあります、飲食店が並ぶ狭い路地です。先ほど爆発音のようなものも聞こえました」

丸昌の入るビルが全焼する火事が発生。ポンプ車など20台以上が出動するも、鎮火まで12時間半を要し、仙台駅前は騒然としました。

去年9月、店の跡地を訪れていたのは丸昌を経営していた秋田市の飲食チェーン「ドリームリンク」の村上雅彦社長(61)です。

ドリームリンク 村上雅彦社長
「ずいぶんご迷惑かけましたみなさんに。『復興支援酒場』という形で被災地のためにとやったものが、結果的に10年過ぎてかえってご迷惑をかける結果になったということ。申し訳ない気持ちでいっぱいです」

東日本大震災が発生した2011年。村上社長は丸昌の前身となる「復興支援酒場」をオープン。地産地消と利益全額寄付を掲げ、売り上げ約1500万円を被災3県に寄付しました。そうした背景もあり、まちに根付いていた丸昌。
仙台駅前という立地の良さなどから、火事の後、ビル管理会社の元には別の飲食店出店を希望する問い合わせが多数寄せられたといいます。しかし、復興支援酒場からの歩みを知っているからこそ、他の店舗への貸し出しなどは行いませんでした。

ビル管理会社 仙都住宅センター 藤野栄次会長
Q問い合わせは多かった?
「結構あります。場所が場所ですから。仙台のためにということで、今まで通りにやっていただければ」

ドリームリンク 村上雅彦社長
「『丸昌頑張れ。復活してほしい』と中には『復興支援酒場忘れてないぞ』というような励ましの言葉をいっぱいいただくことができて、市民の声に応えて(オーナーが)ご決断くださったと私自身、理解している」

また、同じ場所で店を開いていいのか…。村上社長に葛藤がなかったわけではありません。しかし、周囲の後押しもあり丸昌復活を決断しました。

「きょうはよろしくお願いします。今回ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」

去年から、ビル管理会社と再オープンに向けた打ち合わせを重ねています。

ドリームリンク 村上雅彦社長
「地元の方々が楽しくくつろいでいただける酒場。以前にも増してそういう空間を作って恩返しをしていきたい。年代を問わずいろんな方々に来ていただいて、楽しんでいただけるお店を目指していきたい」

火事の後も店を思い、再建を後押ししてくれた仙台への恩返しを誓い…火事から2年あまりを経て、来年3月、“せんべろ通り”に再び明かりをともします。

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