人は自分に都合のいい言葉を信じたい。

 確かめることもせず、あるいは確かめるすべもなく、自分で思考することをやめた頭は、他者の流す情報や言葉を自分の言葉のように垂れ流す。

 ラジオの開戦ニュースに始まり、玉音放送で終わった太平洋戦争。その間、国民が知らされるのは至る所で戦果を挙げ、負け知らずの日本国の躍進。アナウンサーたちは朗々たる声で国民を鼓舞し続けた。

 戦況悪化の事実を目の当たりにしても、国家の宣伝者としての立場を降りられないアナウンサーたちの苦悩と葛藤がつぶさに描かれる。この先、同じようなことが起きたとして、果たして私のさびた頭は、事実ではない映像や言葉を間違いなく取捨選択できるのかと暗たんとする。無駄と諦めず、磨かねば。

(スターシアターズ・榮慶子)

◇シネマプラザハウスで上映中

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