“神の手”にしか出来なかった手術も、多くの医師が出来るようになるー。医師のかわりに“目”となる技術が超進化!手術中に「宙に浮かぶ臓器」を操る、メタバース医療とは。

“神の手”は不要に…?医療を変える超高性能CT

日曜劇場『ブラックペアン』で“神の手”を持つ心臓外科医を演じる二宮和也さんに、その天才的な手術の技術を教えた心臓医療のスーパードクター、下川智樹医師。

かつて“生きるか死ぬか”といわれるほどだった心臓手術で、失敗のリスクが激減していると話します。

『帝京大学』心臓血管外科 下川智樹教授:
「お腹を開いてみないとわからない、“神の手”にしかできないというのが以前の手術だったけれども、最近では事前に手術の計画がほぼ完ぺきにできる。非常に安全に手術ができるようになった」

リスクを激減させる「完ぺきな事前準備」を可能にしたのが、最新のCT検査です。10分ほど寝ている間に身体を輪切りに撮影するCTの「解析能力」が大きく向上したのです。

他の臓器と違い常に動いている心臓。静止画のCT画像はこれまで、心臓の動きに対応できていませんでしたが…

『帝京大学』心臓血管外科 下川智樹教授:
「心臓が大きくなってそれが小さくなる1心拍で、以前は2分割、4分割で撮っていたものが、今では10分割まで撮れる。非常に細かいデータが得られるようになってきた」

心臓の動きを細かくチェックできるようになったことで、手術の成功率も上がったとのこと。例えば、心臓手術で最も多い弁膜症の手術。

弁と心臓の一部を専用の糸でつなぐオペですが、心臓が動くとその距離も変わるため、ちょうどいい長さの糸を準備しなければなりません。

以前は想像に頼るしかなく、用意した糸が実際の手術で合わないケースも…。しかし心臓の動き全体が確認できるようになり、ミスがなくなったといいます。

アバター医師が「メタバース診察」

CTの進化は、もうひとつ新たな技術を生みました。

原部員:
「え?何か人間がいますよ!誰かが手を振ってくれています」

ゴーグルの中で手を振っていたのが、バーチャル杉本医師!本人そっくりのアバターが、リアルタイムで本人と同じ動きをして、会話もできちゃうんです。

『帝京大学』冲永総合研究所 Innovation Lab 杉本真樹教授:
「遠隔地、山とか海とか島とかなかなか病院に来られない患者さんに、表情や手の動きで伝えることで、よりコミュニケーションが円滑になる」

テレビ電話やリモートとは違う、アバター同士の「メタバース診療」。数年以内の実現をめざしていて、対面が苦手な患者さんもいる心理療法への活用も期待されています。

中にも入れちゃう!“宙に浮かぶ臓器”

CTやMRIで撮影した画像をもとに、立体化した心臓や肺、肝臓などの“3D臓器”が目の前に。画面の中で手でつまむと、大きくなったり小さくなったり、上下左右の回転も自由自在にできちゃいます。中に入り込むこともできるので…。

THE TIME,マーケティング部 原部員:
「私いま大動脈の中にいます。臓器の裏側も見えちゃうんですね」

“宙に浮かぶ臓器”のシステムは、すでに国内の施設60~80か所で使われており、手術での使用例も5000件ぐらいになるといいます。

実際の手術中の映像をみると、ゴーグルをかけた医師たちが目の前の空間に映し出された3D臓器を見ながら話し合う様子が。

患者の臓器の状態を全員で共有し、これまでは切らないと見えなかった部分も確認してから施術できるため、ミスが無く手術時間も短縮。患者へのカラダの負担も減るといいます。

『Holoeyes』CEO 杉本真樹教授:
「今までは試しに切って、血が出てしまっても仕方がない。それをすぐ止められるのがベテランのドクターと言われていた。これからは、ここを切ると多分血が出るだろうというのを予想できる」

“宙に浮かぶ臓器”を使えば、カテーテル手術なども、どこからどう入れるか事前にシミュレーションもできるうえ、海外にいる医師と一緒にシミュレーションすることも可能!

手術ミスを未然に防ぐメタバース医療は、医学生への指導にも使われています。

医学生:
「教科書で見てると、本を書いている先生のある一点の画像でしか勉強することが出来ないので」

『Holoeyes』CEO 杉本真樹教授:
「1人の“神の手”を育てるのに何十年かかるんですけど、これからはもっと短い時間で、若い人がすぐベテランの域に達せられると思う」

医療の最新テクノロジーが、医師全体の技術を“神の手”なみに押し上げつつあるのです。

(THE TIME,2024年9月13日放送より)

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