優れたテレビドラマの脚本家に贈られる第42回向田邦子賞(東京ニュース通信社など主催)の最終選考が23日にあり、「グレースの履歴」(NHKBSプレミアム)の源孝志さん(62)が選ばれた。同日、都内であった受賞会見で源さんは、「憧れの賞だった」と喜びを語った。

 源さんは、これまで「同窓会へようこそ」(TBS系)「京都人の密かな楽しみ」(NHKBSプレミアム)などで脚本を担当してきた。多くのテレビドラマ作品で演出を手がけるほか、映画監督も務めてきたが長年、脚本家として認められたい思いもあったという。

 脚本の師匠がいるわけでも、そのための学校に通ったわけでもない。「子どもの頃に見ていたテレビが先生」。中でも少年時代から見てきた向田さんの作品が血肉になっているという。

 今作は昨年3~5月に放送された。「グレース」という愛車に乗って成田に向かい、旅先で亡くなった妻(尾野真千子さん)のカーナビ履歴に残された謎を解くため、夫(滝藤賢一さん)が旅に出る物語だ。登場人物の心情をあぶり出す描写や巧みな構成で、情愛と喪失、生と死の問題を連続ドラマとして昇華させた、などと評価された。

 選考委員は、井上由美子さんや大石静さん、坂元裕二さんらが務める。井上さんは「全く緩まず全話緊密に練り上げられていて、かといって決して堅苦しくない静かなおかしみもあって、素晴らしい内容だった」と評した。

 向田邦子賞は、前年度に放送されたテレビドラマの脚本を対象に選考されている。

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