「ツンデレ」エリート弁護士と、「ワンコ系」天才詐欺師——正反対の二人がバディを組み、痛快にトラブルを解決していくサスペンス&ボーイズラブ(BL)コメディドラマ『毒恋〜毒もすぎれば恋となる〜』。本作を企画・発案した渡辺良介さんは、日曜劇場『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(2021年)など、数々の作品を手がけてきたプロデューサーだ。

本作では、深夜ドラマという「限られた」枠組みの中で、ドラマ・コミックス・小説というメディアミックス構想を打ち出し、登場人物など同じ基本軸はあるものの、媒体それぞれのファン層を意識した見せ方などにもこだわる。需要が高いと見込み挑むBL作品は、自身にとって初の試みでもある。

W主演を務める俳優・濱正悟と兵頭功海が演じるのは、大手法律事務所の最年少共同パートナーで、恋愛初心者の志波令真(濱)と、他人になりすます類いまれなる才能を持ち、甘え上手で尽くしキャラのハルト(兵頭)。タイトルにもあるように、遠慮なく距離を詰めてくるハルトに、 「君は距離感がおかしい!」と最初は困惑する志波が、じわじわと自身の領域を侵されるように「毒」されていき、「恋」に落ちていく——。渡辺さんは「BLとしてだけでなく、人間愛ドラマとしても楽しめる」と話す。

自らを「テレビが大好きなテレビマン」と明かす渡辺さんには、ストリーミングサービスなどが台頭し勢いを増す中、「今一度テレビを盛り上げたい」という思いもあるという。自身の譲れないこだわりや、本作にかける思いなどについて語る。

変化を加え「新鮮味のある」BLに

——本作を手掛けるに当たって、どのようなことにチャレンジしましたか?

まずは最初に、TBSの深夜ドラマ枠「ドラマストリーム」でBLものを提案したかったというのがありました。BLは今、需要が高いジャンル。その中でも特に、新鮮味のあるBLをやりたかった。それで変化を加えたくて、今回はBLでありつつ、「バディもの」で事件を解決していくという要素や、サスペンスの要素も加えて、ラブストーリー以外の部分も強めに打ち出す企画にしようと思いました。そして深夜枠で通常のプロモーションと比べると、リソースにも限界があるので、小説を出すことや、コミックを同時に展開することを考えました。キービジュアルも含めて視聴者の方々の目に触れる機会も増えて、ドラマのオンエアにとってもプラスにつながるので、最初からメディアミックスを仕掛けたという流れです。

——BLに対して興味を持たれたきっかけなどはあったのでしょうか?

以前、僕の所属する会社で「チェリまほ(30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい)」を制作したことがあって、とにかくニーズが高いジャンルだなと思っていました。全然その世界について知らなかったので、詳しい方のお知恵を借りようと思って、今回の流れになりました。ただ、ドラマでは先ほどもお話したように、ストーリー性の部分を強くしたくて、視聴者がどんなキャラクターが見たいのか、というようなところから、小説家の牧野圭祐さん(原作者)と、小説の編集者、コミックの編集者と僕の4者で、絶えず打ち合わせをしてきました。それも新鮮でしたし、新しい作り方に今回チャレンジできたと思っています。

「テレビが大好き」 テレビマンとして追求していきたいもの

ドラマでも、バラエティーなどの番組でもそうなのですが、「見たことのないものを作る」というのが、僕はテレビの使命だと思っています。だからドラマにおいても、なるべく見たことのないストーリーだったり、設定だったり、そこは追求していきたいですね。メディアミックス自体は特に新しいことでもないと思うのですが、これまで「ドラマストリーム」という枠でやってこなかった仕掛けでもありますし、BLの中に違うストーリーや要素を組み込むことで、これまでのBLとはちょっと違った作品になっているとも思います。そうした試みは、絶えず意識してやっていきたいなと思っています。

——そのような作品を打ち出す中で、今回W主演を務める濱さん、兵頭さんについては、どのような印象をお持ちですか?

まずは原作のイメージに見事にぴったりのお二人に出演していただくことができて、うれしかったですね。兵頭さんには、かわいらしい「ワンコ系男子」のハルトをすごくチャーミングに演じてもらっています。ハルトにはちょっとミステリアスなバックボーンもあるのですが、とても難しいニュアンスを、いいお芝居でうまく表現してくださっています。それに対して、濱さんが演じている志波は、完璧に見える男だけど恋愛に関しては経験ゼロで、兵頭さん演じるハルトに翻弄されているという役どころ。その面白さだったり、ちぐはぐさだったり、ドギマギした感じの「かわいらしい抜け感」のようなものを、すごくかわいいキャラクターに仕上げて上手に演じてもらっているなと思います。

街なかで偶然聞く「視聴者の声」

それが僕はあまりエゴサなどもしなくて、初回の後は時々見ることもありますが、それに振り回されることもないです。一番の醍醐味は、電車の中やカフェで、視聴者の方が自分の作ったドラマの話をしているのを偶然耳にすること。それが一番気持ちいいです。昔はTwitter(現X)などもなかったですし、出てくる数字も、結局視聴者本人の姿が見えるわけではないので、実際にどんな方に届いているかは分からない中で「数字」に翻弄されてしまっている面もあります。でも、「今この時間にどこかで誰かが見ていて、息抜きになっているかもしれない」と思えるのが、テレビという存在だと思っていて、僕はそこが好きなんです。だから番組を見てほしいな、とももちろん思うのですが、「しっかり見てくださいね」と押しつけるものでもなくて、生活の一部にあって、息抜きにもなるような、ある意味「そんなもん」。そんな中でも「たかがテレビ、されどテレビ」というのがあって、大げさにも聞こえるかもしれませんが、一生懸命、魂を削って、「このカットは違うのかな」とか、「このセリフ、もうちょっと書き換えよう」とかやっているテレビマンが好きだし、そういう一人でいたいと、ずっと思っています。

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