繊細な節回しが難しいとされる北海道を代表する民謡「江差追分(えさしおいわけ)」の歌い手日本一を決める全国大会が20~22日、本場の江差町であった。1963(昭和38)年の第1回からコロナ禍で2回の中止を経て今回で60回目。全国から集まった6~90歳の335人が普段の練習の成果を披露した。

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 江差追分はわずか26~27文字で厳しい北の海辺の情景や生活を表現する約3分の歌だ。「ソイがけ」というかけ声に合わせて、全国大会では尺八の伴奏で歌う。代表的な歌詞に「かもめの鳴く音にふと目をさまし あれが蝦夷地の山かいな」がある。

 22日は中学生までの少年、70歳以上の熟年、一般の部の決選会が開かれた。少年の部で優勝したのは、北海道千歳市立北斗中学校1年の近藤佳星(かほ)さん(13)。「江差追分は海の歌。波が寄せたり引いたりするところを表現できました」

 2歳で民謡を趣味で歌う母に連れられて師匠の福士優子さん(49)に習い始めた。江差追分の全国大会には5歳から出場し、昨年は少年の部で2位だった。

 江差追分の歌い手は高齢化が進み、全国的に減っている。「趣味は民謡だけ」と言い切る近藤さんは、同級生に民謡を歌っていることを積極的に伝えている。「どんな歌詞なの」などと興味を持ってくれる。「これからも色々な人に江差追分や民謡を広めていきたい」

 最年少で9位入賞した小学2年の川上冬馬(とうま)さん(7)=北海道苫小牧市=には、歌の途中で何度も客席から拍手が起きた。一般の部で6位になった母の真奈さん(37)は「普段の練習は嫌がりますが、賞がもらえる大会に出るのは楽しいみたい。これからスポーツとか色々なことに興味を持つと思いますが、できるところまで続けてほしい」。

 歴代優勝者の中で現役最年長、90代の木村正二(まさじ)さん=北海道厚沢部町=は「地元でも江差追分を聞く人が少なくなっている。小学生に歌って聞かせて、1人でもファンを増やしたいね」と語る。木村さんは「次世代への継承」をテーマにしたアトラクションで歌を披露した。

 一般の部では、昨年2位だった内村義徳さん(42)=札幌市=、熟年の部では佐藤美枝子さん=札幌市=が優勝した。

 内村さんは受賞後、「力を振り絞って歌った。感無量です。まだまだ勉強でこれがスタートですが、若い人たちに江差追分の魅力を伝えていく立場になった」と喜んでいた。(野田一郎)

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