岐阜県郡上市の最奥の集落にある「石徹白(いとしろ)洋品店」が手がける衣類が、英国で開催されている日本の民藝(げい)(民衆的工藝)を特集した展示会「Art Without Heroes Mingei」で取り上げられている。古くから地域に伝わる技術や知恵を現代風にアレンジし、時代を超えて受け継いでいることが主催者側から評価され、出展に結びついたいう。
石徹白地区は岐阜県の奥美濃のさらに奥にあり、福井県との県境に位置する人口約250人の集落。洋品店は、この地に残る豊かな自然にみせられ、岐阜市から移住した平野馨生里さんが、築140年の古民家を活用して、2012年5月に開業した。
英国での展示会に出展しているのは、農作業用のズボン「たつけ」や「越後シャツ」など3点。
たつけは、平野さんが地元のお年寄りと交流を重ねるなかでつくり方を習い、約50年ぶりに蘇らせた。生地を直線的に裁断することで無駄をなくし、パズルのように組み合わせながら縫い合わせて仕上げるのが特徴で、染み上げでは、草木や藍で染めるなど、地域の植物を生かす。デザイン面では色や形を現代のライフスタイルにあうよう工夫をしているという。
「ものづくりはとても豊かな気持ちになる」
展示会はロンドンの博物館ウィリアムモリスギャラーで9月22日まで開かれており、三つのコーナーで構成されているという。
「民藝の三世代」をテーマに、柳宗悦と仲間たちに影響を与えた19世紀。浜田庄司、河井寛次郎による民藝運動が活発になり、民藝の土壌が醸成された20世紀。今日の民藝のあり方を問いながら、その核となる価値観を現代的に再解釈する21世紀のブランドの3コーナー。洋品店の3点は21世紀のコーナーのなかで現代の民藝を象徴する「エココンシャスブランド」として紹介されているという。
平野さんは「季節の移り変わりを感じながら、自然の恵みに感謝し、ものづくりをすることはとても豊かな気持ちになる」といい、「日本人が積み重ねてきた知恵が海外でも評価され、より多くの方に伝わっていくことがうれしい」と話している。(松永佳伸)
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