8月9日の長崎原爆の日に開かれる平和祈念式典で、長崎市長が読み上げる「平和宣言」の内容を話し合う起草委員会の初会合が3日、同市であり、原爆を開発した米国の物理学者の苦悩を描き、米アカデミー賞を受賞した映画「オッペンハイマー」を盛り込むことを望む意見が複数出された。
起草委は被爆者や学識者ら計15人で構成。会合で、被爆者で医師の朝長万左男さん(80)は映画について、「核兵器の非人道性を描いている。米国でも核廃絶の声が上がり始めている」として、平和宣言で言及することを提案した。
一方、別の委員は映画をめぐり、SNSで原爆被害を軽視するような投稿がなされて論争になったことを指摘し、「私たちが訴えてきた被爆の実相は世界に届ききっていない。核兵器の非人道性を軽視する思想に終止符を打つような平和宣言が望ましい」と訴えた。また別の委員は、「映画を見て、核保有国となった米国が、核を使わない選択肢もあったのではと感じた」と話した。
同映画は、「原爆の父」と呼ばれた物理学者ロバート・オッペンハイマーが主人公。原爆の開発に成功したものの、その破壊力の大きさから水爆の開発に反対し、政治的迫害を受ける半生を描いている。今年3月、第96回米アカデミー賞の作品賞など7部門を受賞した。日本でも3月から上映され、委員の議論を触発したようだ。
起草委は夏までに計3回の会合を開き、市は意見を参考に宣言文をまとめる。鈴木史朗市長は初会合の後、「科学者として核兵器を開発して、それが非人道的な結末をもたらすことに関する苦悩を描いた映画。米国の市民に対して、核兵器廃絶に対する思いを芽生えさせているという話もあった。そういう意義を大切にしていきたい」と語った。(西本秀)
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