人気演芸番組「笑点」の大喜利レギュラーメンバーなどとして知られる落語家の桂宮治の第3回独演会が4月5日、那覇市のタイムスホールであった。「令和の爆笑王」の異名もある宮治は開演前に「沖縄は夏に近づく季節だし、初めてお会いするお客さまも多いと思うので、ずっと陽気にいこうかな」と話した通り、テレビ番組で具志堅用高と沖縄ロケをした際のエピソードなどを交えたオープニングトークで観客の心をつかむと、「権助魚」「勘定板」「花見の仇(あだ)討ち」で会場を沸かせ続けた。一方、昨年発行した著書「噺(はなし)家 人嫌い」では人間関係に悩んだ時代や師匠の教え、妻の支えなどをつづる。落語観や人付き合いなどについて聞いた。(聞き手=社会部・真栄里泰球)
-3回目の独演会だが、沖縄の印象は。
「こちらでは『笑点』を地上波放送していないので、全然ネームバリューもないのに、落語会のお客さまも、街で出会う人もすごく優しく受け入れてくれる。沖縄に初めて来たのは高校の修学旅行だった。ホテルのプライベートビーチへ友達とワーッて出てたら、出ちゃいけなかったみたいで先生にめっちゃ怒られたのを覚えている。落語家になる前、化粧品の営業マンの時も何度も来たが、温かくて優しいイメージが一番だ」
-独演会の構成の工夫は。
「初めてお会いするお客さまが多い時は陽気な噺が多くなる。だが、落語の楽しみは笑うだけではないと思う。自分の人生や今まで経験してきたこと、家族のこと、知り合いのこと、ちょっと悲しかったこと、うれしかったこと、怖かったこと、そういったものを全部体験できるところにもある。いろんな落語を聞いていただきたい。ちょっとこぢんまりした会だったり、何度も落語会に来ている方が多そうな会だったりだと、笑って帰ってもらおうっていうのとは違う演出をする機会がちょっと多いですかね」
-春になって新しい環境に悩む人にアドバイスを。
「あるラジオ番組に出演した時に調べてくれたのだが、年齢に関係なく、ほとんどの方が人付き合いに何らかの悩みを持っているそうだ。僕と一緒だと思った。無理せず頑張らずに、ゆっくり行けばいい。最初からうまくいくことなんてないんで。ただ、人と会う時はきちんと笑顔で元気に、相手に何かをしてもらったら感謝をする。それさえ繰り返していけば、何か花が咲いてくるんじゃないかな」
-色紙などには「明るいところに花は咲く」と書く。
「自分がそうではない人間なので、自分に向けて書いているところがある。人間関係は自分を映す鏡だと思っている。皆さん、お互いに自分のためだと思って、笑顔で楽しくいきましょう」
-それに気付いたのはいつごろ?
「今年48歳だから、もっと早く気付かなきゃいけないが、人生は失敗したり、つらいことがあったり、つらいことをさせてしまったりの積み重ねだと思う。『笑点』の三遊亭好楽師匠はいつも陽気で明るくて、全国どこに行っても誰とでも友達になれる、すごく優しい人だ。が、誰よりも苦しくて、つらい時期を味わっている。大変なことを経験して、きちんと成長して、素晴らしい人になれるんだという背中を見せていただける先輩がいるのがありがたいし、そういう風になりたい」
-今後の「笑点」は。
「僕が入った時に先輩方に言っていただいたのは、『笑点』はファミリーだということ。スタッフさんも含めてみんなで協力し合ってボールを投げて、受けて、パスしてやっていく。放送日は基本は日曜日の夕方。あす学校に行きたくないなとか、仕事つらいなって思っている人たちに、ちょっとほっこりしていただける番組をずっと続けたいなと思う。東京に帰ったら沖縄でも地上波放送できるように、強く言いたい(笑)」
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