砂の色が移り変わる 「砂の海」の不思議な美しさ
アフリカに「砂の海」と名付けられた世界遺産があります。それがナミビアの自然遺産「ナミブ砂海」。砂丘が延々とつづく規模の大きな砂漠を「砂海」と呼ぶのですが、ナミブ砂海は大西洋岸に沿って南北320キロも広がっています。
特筆すべきは景観の美しさで、風によって砂丘は刻々と姿を変え、砂の地表には波のような風紋が刻まれます。さらに海岸に近いところは白い砂丘、内陸に行くと赤い砂丘と、砂の色が移り変わっていきます。海から吹く風で砂は内陸へ内陸へと移動していくのですが、その過程で付着した鉄分が酸化、つまり錆びて赤い色になるといいます。この白から赤への色のグラデーションも見どころです。
番組「世界遺産」でこのナミブ砂海を撮影したのですが、砂漠の中にいくつもの枯れ木が林立している奇妙な場所がありました。元々は湖があり緑の木々が生えていた所で、乾燥化によって湖は涸れたのですが、木々は乾燥しきっているために枯れても腐らず、モダンアートのオブジェのように残ったのです。不思議な美しさが、ここにはありました。
4500万年前に生まれた「世界最古の砂漠」
このドラケンスバーグ山脈の岩の層が雨風で浸食されて、小さな砂になります。その砂が大西洋まで流れる川によって運ばれ、海に出るとさらに海流に乗って北上し、波と風でナミビアの海岸に吹き寄せられたのです。ナミブ砂海を形作る膨大な砂・・・それが2000キロも旅してきて砂海になるまでには気の遠くなるような時の流れがありました。ここは4500万年前に生まれた「世界最古の砂漠」と言われます。
南北123キロある世界最大の砂の島 島には湖も
このフレーザー島の砂は、オーストラリアの別の世界遺産「グレーター・ブルー・マウンテンズ地域」の砂岩に由来します。シドニーから内陸に入ったところにあり、標高1000メートルくらいの岩山が連なるグレーター・ブルー・マウンテンズ地域。谷にはユーカリの森があり、その葉の表面の油分が強い日差しを浴びると気化して、そのために谷が青くかすんで見えます。これが「大いなる青い山並み」と名付けられた所以です。ここの砂岩の断崖が浸食されて砂になり、それが川と海流によって運ばれてフレーザー島の位置に溜まり、50万年以上もかかって世界最大の砂の島を生んだのです。
ナミブ砂海もフレーザー島も、遠く離れた別の世界遺産から川や海流によって砂が運ばれて生まれた世界遺産。かたや広大な砂漠、かたや海に浮かぶ島ですが、その成り立ちには相通じるものがあったのです。
執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太
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