奈良市の世界遺産・興福寺五重塔(国宝)で、約120年ぶりの大規模修理に向け、塔を覆う素屋根の建設が本格化している。奈良県文化財保存事務所が16日、現地で報道関係者向けの説明会を開いた。

 塔は高さ約50メートル。京都の東寺(高さ約55メートル)に次ぎ、国内2番目に高い。奈良時代の730年に光明(こうみょう)皇后の発願で建立され、落雷や戦火で5回焼失。現在の塔は1426年の再建とされる。

 大規模な修理は1901年の屋根のふき替え以来。同事務所によると、瓦や組み物、しっくい壁の破損が目立ち、瓦のほか、屋根の上に立つ「相輪(そうりん)」も地上に降ろし、修理方法を検討する。

 現在は長さ約110メートルのクレーンを使い、素屋根(高さ約60メートル)の鉄骨柱を立てる作業が続く。今年度中に完成する見込みで、その後数年間は塔の姿が見えなくなる。

 興福寺の辻明俊(みょうしゅん)執事長は「塔は見えなくなっても、歴史と文化を継承する貴重な時間。1300年の寺の歴史からすれば点のようなものだと思う」と話した。事業費は約57億円。修理は2031年春までの予定。(神田剛)

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