囲碁名人戦挑戦者決定リーグ戦(朝日新聞社主催)は16日、井山裕太王座が山下敬吾九段に黒番中押し勝ちし、スコアを3勝2敗として白星先行。逆に山下は2勝3敗と負け越し、リーグ残留争いに突入した。
井山が中盤、鮮やかなカウンターパンチを決めて大きな白星を手にした。あまたの番勝負を繰り広げてきた両者は、これまでともに2勝2敗。5戦全勝で首位を走る一力遼棋聖、余正麒八段に後れを取り、リーグ陥落の心配さえもたげてきたところで激突した。
本意ではないだろうが、優勝争いとはまた違ったシビアな落とし合いで、井山は中盤、自身の黒模様に深々と突入した山下に対し、陣構えの不備を突いた強烈なカウンターを決めた。模様に突入した相手の一群のみならず、全局にわたり攻勢に出た。山下は粘るも陣取り合戦で後れを取り、逆転のよすがとなる井山の弱石も見当たらず、投了のやむなきに至った。
3月、棋聖戦七番勝負で一力へのリベンジを果たせずタイトル奪還を逃した井山だが、逆境から驚異の巻き返しを見せている。4月に芝野虎丸名人から十段のタイトルを奪取し、三冠に復帰。世界メジャー「爛柯(らんか)杯」で台湾のアジア大会覇者を破るなど3連勝で8強進出。余勢を駆って国内各棋戦も好調を維持し、現在公式戦8連勝中だ。
近年、世界戦で振るわず、20日開幕の世界メジャー「LG杯」は「戦えるレベルにない」と出場を辞退し、ほかの棋士に譲った。日本のエースとして世界戦に重きを置いてきた井山が、国内棋戦の日程の都合上キャンセルしたケースは多々あるが、自ら辞退したのは初めてだった。情け容赦なく一力、芝野を退けてきた「魔王」の急速充電は完了したか。霧は晴れつつある。(大出公二)
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