車いすを離れ、立ち上がって演じるギリヤーク尼ケ崎さん(中央)=横浜市神奈川区で2024年5月18日午後8時28分、後藤豪撮影
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 観衆の「投げ銭」を糧に生きるまれな芸風で「伝説の大道芸人」と称されるギリヤーク尼ケ崎さん(93)が5月18日夜、横浜市神奈川区の六角橋商店街で開かれたイベントに出演した。体調が優れない中、3演目を披露。立ち見を含む約600人の観客を前に、ギリヤークさんは「いままで踊ってきて今日ほど感動したことはありません」と述べた。

 今年8月で94歳になるギリヤークさんは満身創痍(そうい)だ。手足が震えるパーキンソン病や背骨が曲がる脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)などを患い、昨年3月には腸を手術した。イベント数日前の毎日新聞の取材に対し、「僕の病気は変わらない。(体の具合は)良くないんですよ」と話していた。

 病を押しての出演だったが、精いっぱいのパフォーマンスをみせた。最初の演目は、命がけで生きる人たちの思いを代弁した「じょんがら一代」。真っ赤な着物に白い羽織、頭にかさをかぶったギリヤークさんが、車いすから立ち上がって演技すると、観客から「ギリヤーク!」の声が上がった。

演目の中で母静枝さんの遺影を手にするギリヤーク尼ケ崎さん(中央)=横浜市神奈川区で2024年5月18日午後8時32分、後藤豪撮影
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 おはこの創作舞踊「念仏じょんがら」では、数珠を振り回し、母静枝さん(1991年に82歳で死去)の遺影を手にして「母さん」「父さん」などと叫んだ。用意していたバケツの水を頭からかぶるおなじみのパフォーマンスで締めくくると、観客から大きな拍手がわき起こった。

 終演後、東京都港区の自営業、高橋舞衣さん(43)は「自分の生きる道をこれだけ追いかける人を見られるだけでも感動。最高でした」。横浜市港北区の自営業、今藤啓さん(54)は「『芸の芸』というか、演じてくれるだけで十分。それでお客さんを呼べるのはすごい」と語った。

 ギリヤークさんは北海道函館市生まれ。職を転々としながら、創作舞踊の道を志した。68年10月、38歳の時に東京・銀座で初めて大道芸を披露した。70年代半ばからはフランスや米国など海外にも活動の場を広げた。95年の阪神大震災、2001年の米同時多発テロ、11年の東日本大震災の被災地でも鎮魂の踊りをささげてきた。【後藤豪】

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