NHK大河ドラマ「光る君へ」で安倍晴明の従者、須麻流役を演じるDAIKIさん(中央)=NHK提供

 身長128センチの男性が、NHK大河ドラマ「光る君へ」で、ユースケ・サンタマリアさん演じる安倍晴明の従者「須麻流(すまる)」を好演している。俳優は初挑戦となるダンサーのDAIKIさん(29)で、短い手足など自身の体を「ブランド」と表現する。

2万人に1人の難病

 DAIKIさんは小学4年生の時、自身の特徴を知った。

 同級生の歩くスピードについていけず、周囲との体の大きさに違いを感じ、パソコンで「小さい」「着られる服が少ない」などのキーワードでインターネット検索をした。

 画面に表示されたのは「軟骨無形成症」という難病だった。骨の成長にかかわる軟骨の異常により低身長や四肢、指が短いことが特徴で「低身長症」とも呼ばれる。

 遺伝子の変異が原因で、2万人に1人とされる先天性の難病について、母は「病気を言い訳にして生きてしまうので、(DAIKIさんが)納得できるようになるまでは伝えなかった」という。

ダンスとの出会い

俳優の初挑戦がNHKの大河ドラマとなったDAIKIさん=アクセシビューティーマネジメント提供

 「気持ち悪い」などと外見について悪口を言われたり、同級生に避けられたりして、周囲や自分への怒りをためこんでいたDAIKIさん。中学2年生の時、転機が訪れた。

 友人の踊る姿を見たことをきっかけに、米ロサンゼルス発祥で、怒りや欲求不満などの感情を表現した「クランプ」というダンスにのめり込むようになった。

 常に気に掛けてくれた教諭にも感化され、大学では保健体育の教員免許を取得した。ただ、実際に採用してくれる学校はなく、教壇に立てなかった。

 やりたいことを周囲に否定され、理不尽がつきまとった。そんな過去があるからこそ、「誰もがダンスを楽しめる場所をつくりたい」と願う。2022年から障害者と健常者をつなぐダンスチーム「ソーシャルワーカーズ(SWZ)」の代表を務めている。

「キラリと光る存在感」

 壁を乗り越え、人生を切り開いてきたDAIKIさんは、未経験の演技に挑戦することになった。障害者専門の芸能事務所から勧められてオーディションを受け、大河ドラマの配役を得た。

 「光る君へ」の制作統括、内田ゆきさんは起用理由を「ダンスのキャリアからか『自分を表現したい』との思いが強く、スキルもある」と説明する。神秘的な力を持っていたとされる陰陽師、安倍晴明を演じるユースケ・サンタマリアさんとのコンビも「しっくりくる」と予想できたという。

 須麻流のセリフは多くないが「視線のお芝居が効いていて、キラリと光る存在感が素晴らしい」と評価する。

NHK大河ドラマ「光る君へ」で、安倍晴明を演じるユースケ・サンタマリアさん(左)と、須麻流役のDAIKIさん=NHK提供

「できることをしたい」

 大河ドラマ出演の反響は大きく、軟骨無形成症の子どもを持つ親などから「勇気と元気と感動を頂いた」とのメッセージが寄せられる。

 一方、同じ難病の人からは「特徴的な体形が大嫌いなので、自分の姿をテレビで見ているような、すごく嫌な気持ちになってしまう」との意見も届く。

 DAIKIさんは「苦しい人がそういう声を上げていると思う。だから、悔しい」とし、こう続けた。

 「僕は自分を表現するうえで、この体を『ブランド』だと考えています。好きなことをして、人前に出ることは面白いし、自分らしくいられる。障害のある人たちがそう思える社会になるように、できることをしていきたいです」【御園生枝里】

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