岐阜県飛驒市神岡町には戦後、神岡鉱山の労働者たちでつくるビッグバンドがあった。高校時代にメンバーに加わり、その後、プロとしてテレビの人気番組で演奏を続けたミュージシャンがいた。いま81歳。26日に故郷の神岡町で、「凱旋」コンサートが開かれる。

 元プロのバストロンボーン奏者、西村久さん。

 父親が技師として鉱山で働き、神岡で育った。吹奏楽部員だった中学2年の頃から、鉱山のビッグバンド「神岡マイン・ニュー・アンサンブル」のリーダー林正輝さん(故人)の指導を受け、高校生になって演奏に加わった。

 バンドは中部地方の社会人音楽祭で上位に入り、東京や大阪のステージでも、招かれて演奏する実力があった。腕を磨いた西村さんは、東京の国立(くにたち)音楽大に進み、卒業後にプロの道に入った。

昭和の人気歌手のバックで

 ジャズのビッグバンド「高橋達也と東京ユニオン」を経て、テレビ番組「夜のヒットスタジオ」のバンドとして知られる「ダン池田とニューブリード」に所属。昭和の人気歌手のバックで演奏を続けた。

 プロの第一線を退いてからもトロンボーンを手に活動を続けている。現在は愛知県大口町で暮らし、岐阜県各務原市を拠点にするビッグバンド「ジャズヒーツオーケストラ」に参加している。

 今回のコンサートは、西村さんが「終活」として、神岡町など各地の神社仏閣を回り、一人で奉納演奏をしているのを知った知人が「ぜひとも故郷のホールで」と企画。飛驒市制20周年記念事業として開く。

 「体力的にぎりぎりで、そろそろ吹けなくなるかもしれない。最後に神岡でやりたかった。鉱山のビッグバンドも思い出してもらえたらいい」と西村さんは言う。

 「凱旋コンサート」と銘打って、26日午後2時から神岡町公民館で開かれる。第1部は「ジャズヒーツオーケストラ」コンサート、第2部は西村さんと、「鉱山(ヤマ)のビッグバンド」(白水社)を著した小田豊二さんらのトークショー、第3部は西村さんがソロでルイ・アームストロングの曲などを披露する。

 前売りは1千円(当日1500円)で、飛驒市文化交流センターや高山市民文化会館などで購入できる。問い合わせは実行委員会(090・8671・9667)。(荻野好弘)

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