映画「毒親<ドクチン>」の一場面=Ⓒ2023,MYSTERY PICTURES,ALL RIGHTS RESERVED

 母娘のねじれた関係は、韓国でも社会問題になっているという。韓国映画「毒親<ドクチン>」は、娘を愛しすぎるがゆえに追い詰める、母親の姿を描く。キム・スイン監督のデビュー作だ。

 高校生のユリ(カン・アンナ)が遺体で発見される。集団自殺の線で捜査を進める警察に、母親のヘヨン(チャン・ソヒ)は「娘が自殺するはずない」と猛抗議。しかし次第に、ヘヨンがユリを異常に束縛していたことが明らかになっていく。

 「韓国では『K-長女』という言葉があるんです」とキム監督。20~30代の長女が、母親から自分の代わりとなることを過大に求められるのだという。「K―POP」と同様、韓国ならではの関係性。

 自身も1992年生まれ。「母と娘は、感情的に微妙な関係になりがち。それに、成功して一番にならなければという社会の圧力は、今でも強い。『毒親』という言葉になじみは薄いけれど、教育熱心で子供に過剰な期待をかける親は珍しくない」。かつて学習塾で講師をしていた時に見聞きした親の姿も参考にした。

 ただ「ヘヨンを悪者にはしたくなかった」と強調する。「ヘヨンはユリを本当に愛していて、よりよい親になろうと努力していた。それが、どこかで誤ってしまった。そのことを考えてほしかった」

 社会的なテーマを扱いながら、物語はユリの死の真相をめぐって二転三転、緊迫感あるミステリー調の展開だ。「子供のころからテレビの犯罪番組が大好きで、自分でも作りたいと思っていた」と話す。脚本家として実績を重ね、監督第2作の公開も控えている。「社会的なテーマも見据えつつ、ストーリー性を大事にしたい」と意欲を語っていた。

 東京・ポレポレ東中野で公開中。順次大阪、名古屋などでも。【勝田友巳】

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