太陽と地球の織りなす美景ビーナスベルトが、フォトグラファー北波(きたば)智史さん(41)=札幌市=によって写真集になった。日の出直前と日没直後のわずかな時間の現象は、朝日や夕日に気をとられ、見過ごされがちだ。あえて人と逆方向に構えたカメラで、日常に潜む美景を伝えている。

 ビーナスベルトは日の出や日の入りのころ、太陽と反対方向の空に現れる。空には桃色の陽光が地平線の近くに帯状に広がり、地球自体の影がその下を濃紺に染める。

 自費出版の写真集「ビーナスベルト」は、北波さんが2020~22年に十勝地方で追った美景をまとめた。北海道新聞社のフォトグラファーとして働く傍らに、撮りためた。

 契機は19年春にさかのぼる。

 北村さんはかねて冬山にも挑む行動派で、仕事では最低でも重さ10キロ超の撮影機材を携え、走りまわっていた。

 ところが、ひざをけがして手術することに。治療で、約3カ月の休職。フォトグラファーでいられるかさえ不安になった。

 その年末、自ら挑戦を課した。北海道豊頃町の大津海岸にうち寄せる氷塊・ジュエリーアイスを日の出とともに撮ろうとした。

 駐車場から海岸まで約30分。極寒の夜明け前をひとり、ゆっくりと進んだ。「ひざが悪くなかったら、すたすた歩けていたら、気づかなかったかも」。空を彩る桃色と濃紺の帯が目に飛び込んだ。

 当初は朝日や夕日に気をとられた。どっちつかずな写真に、「自分の心が撮りたいと言っているものを撮ろう」と思い定めた。

 写真集にしたのは妻の一言があったから。子どもを保育所に迎えにいく夕暮れ。太陽の反対側の美景について語った。「きっと知らない人がいっぱいいる」と、背中を押してくれた。

 現象自体は世界中で毎日のように現れ、都会でも見られる。ただ、「多くの人に見えているけれど、気付かずに通りすぎている」。

 北波さんは「日常のすぐ近くに素敵な世界が潜んでいる。今後も伝えていきたい」と話した。

 写真集は1冊2500円、送料300円。北波さんの公式サイト(https://kitaba.theshop.jp/)で買える。(角野貴之)

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