ローマ字の表記の仕方には、大きく分けて2通りある。1937年に内閣訓令で定められた「訓令式」と、幕末に来日した米国人宣教師のJ.C.ヘボンが考案した「ヘボン式」だ。訪日客や日本で暮らす外国人が増える中、混在する表記法を整理し、ヘボン式が浸透している実態に合わせるため、文化庁の審議会で検討が始まる。

ローマ字表記の違い

地名例

訓令式 ヘボン式
渋谷 Sibuya Shibuya
愛知 Aiti Aichi
難波 Nanba Namba
富士 Huzi Fuji

事物例

訓令式 ヘボン式
柔道 zyudo judo
津波 tunami tsunami
豆腐 tohu tofu
すし susi sushi
天ぷら tenpura tempura
絵文字 emozi emoji

国は54年の内閣告示で「一般に国語を書き表す場合」は訓令式を用いるとし、小学校でも内閣告示を踏まえた学習を求めている。一方で、ヘボン式は英語のつづりに近く、戦後に連合国軍総司令部(GHQ)が駅名表示などに採用して浸透した。


JR渋谷駅の看板=2024年2月9日、東京都渋谷区(時事)

文化庁国語課は「内閣告示は強制力があるものではなく、あくまで国が示している目安」と説明。内閣告示も、国際関係や慣例が「にわかに改めがたい事情にある場合に限り」、ヘボン式の使用は問題ないとしている。現在、パスポートや各種案内表示ではヘボン式が広く使われている。審議会での検討が進んで内閣告示が改定されることになれば、約70年ぶりとなる。

盛山正仁・文部科学相が5月14日、ローマ字表記についての検討を審議会へ諮問した文書では、内閣告示の時点においては「ローマ字を用いて国語の文章をつづることを想定していた」とし、現在の主な使用目的が「日本語を母語としない人たちへの配慮や、国際社会への情報伝達」になっていると指摘している。

審議会では、すでに国際社会で広く使われている「judo」「matcha」など、英語に準じたローマ字表記についても検討する。審議会は来春以降に結論を出す見通し。

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