岸田文雄首相

 岸田文雄首相は4日、会期末を23日に迎える今国会での衆院解散に関し「今は政治改革をはじめ先送りできない課題に専念している。それらにおいて結果を出すこと以外のことは考えていない」と述べた。首相官邸で記者団に解散を見送るのかと問われて答えた。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けて内閣支持率は低迷を続け、解散総選挙を行えば与党が議席を減らす可能性が高いことから、与党内では解散見送り論が大勢を占めている。

 公明党の山口那津男代表も4日、「地方選でこのところ自民党ないし与党の推薦した候補が負け続けている。そのことは真摯(しんし)に受け止めなければならない」と首相官邸で記者団に語り、早期解散に慎重姿勢を示した。林芳正官房長官は4日の記者会見で解散判断に関し「首相が発言しており、それに尽きる」と述べた。

 裏金事件で自民への逆風は強まり、毎日新聞の世論調査では内閣支持率は5月まで11カ月連続で30%割れと低迷している。自民は4月の衆院3補欠選挙で不戦敗を含めて全敗。5月の静岡県知事選では推薦候補が立憲民主党などの推薦候補に敗れるなど地方選でも敗北が続き、自民内では「首相では衆院選を戦えない」との声が強まっている。首相周辺は「現状で解散なんてできない」と語った。

 首相は今春闘での賃上げ実現などを追い風に、今国会中に衆院解散に踏み切り、総選挙で勝利したうえで9月の自民党総裁選で再選されるシナリオを模索していたとされるが、見直しを迫られている。

 首相は政治資金規正法改正案を今国会で確実に成立させたうえで、今月開始の1人4万円の定額減税やイタリアで13~15日に開かれる主要7カ国(G7)首脳会議などの首脳外交、憲法改正議論の推進などを通じてまずは政権浮揚を図りたい考えだ。

 政府・与党は今国会を延長せずに終えたい構えで、首相は終盤国会の情勢を見極めたうえで解散見送りについて最終判断する。【影山哲也】

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