特集は国民スポーツ大会・国スポです。国体から国スポの名に変わりますが、開催自治体の財政負担が大きく、今、見直し論が浮上してます。4年後、長野県内でも開催される大会。どうあるべきなのでしょうか。


■2028年に長野県内で開催

建て替え工事が進む松本平広域公園陸上競技場。2028年に開催される「信州やまなみ国スポ」の開閉会式会場になります。

長野県・阿部守一知事(2023年7月):
「やまびこ国体から50年目の節目、長野冬季五輪・パラリンピックから30年の大きな節目の年に開催できることはありがたい」


戦後間もない1946年に始まった国民体育大会「国体」。国民の体力向上やスポーツの振興を目的に都道府県の持ち回りで開催されてきました。

開会式:
「開催地、長野県選手団の入場であります」

県内で開催されたのは1978年の「やまびこ国体」。


競技会場が整備され選手の育成・強化が図られました。


■開催自治体の財政負担

名称は2024年から国民スポーツ大会「国スポ」に変わりますが、4月、大会のあり方に一石を投じる発言がありました。

宮城県・村井嘉浩知事:
「今のように、47都道府県が順番に、すべての競技を1カ所に集めて、年に1回やるのは見直す、やめるべきじゃないかという意見を出している」

全国知事会の会長でもある宮城県の村井知事が、「廃止もひとつの考え方」と述べたのです。


大きな理由は、開催自治体の財政負担です。

やまびこ国体の開閉会式会場となった松本平広域公園陸上競技場。老朽化が進み、バリアフリー化も課題となり、建て替えられることになりました。

総事業費は159億円にのぼる見込みです。

他にも上田の県営球場や辰野の射撃場の改修工事も予定されています。


■ゼロベースであり方を考える必要

阿部知事はほかにも運営経費として60億円から100億円ほどがかかる見通しを明らかにし、こう述べました。

長野県・阿部守一知事:
「ほとんどの開催経費を地元の都道府県が負担している、そのあり方も国民スポーツ大会のあり方としてどうなのかと、私は大きな論点ではないかと。これからも同じような形で続けるべきなのかと考えた時には、ゼロベースであり方を根本から考えるということが必要ではないかと」


負担は県だけではありません「やまなみ国スポ」は県内31市町村を会場に行われます。

競技会場を抱える市町村も広さや観客席の数など開催基準を満たす改修が必要になります。


長野市は長野運動公園の体育館の老朽化が進んだことからバスケットボールの会場となる新たな体育館を建設します。

事業費は約88億円です。


ほかにも成年女子サッカーの会場として、37億円余りをかけて長野Uスタジアムの近くにフットボール場を整備する計画です。

合わせると事業費は120億円以上になり、2分の1の補助があるとはいえ、大きな負担です。


オリンピックの金メダリストで、一線を退いた後も度々、冬の国体に出場してきた荻原市長も、見直し論には理解を示しています。

長野市・荻原健司市長(4月24日):
「国体・国スポの役割は今後どうしていくのか、競技の側面、自治体の財政的な側面も含めて考え、問い直していくことには賛同。単に国スポのためだけでなく、結果的には市民の健康増進・スポーツ振興につなげていきたい、一番の根底にある思い」


■スポーツ振興の面で一定の成果

一方、大会はスポーツ振興の面で一定の成果を挙げてきました。

やまびこ国体でフェンシング競技の開催地となった箕輪町。少年男子が優勝したこともあってその後、中学校に県内唯一の「部」が発足。

子どもたちを対象にした「ジュニアクラブ」も立ち上げられました。

東京オリンピックには、地元出身の西藤俊哉選手が出場。オリンピアンも輩出しています。


小諸市が開催地となったレスリングも、国体をきっかけに周辺地域に根付きました。

現在、小諸市、佐久市、上田市の4つの高校(小諸商業、小諸、佐久平総合技術、上田西)にレスリング部があり、キッズレスリング教室も開かれています。


こちらは長野東高校水球チームの練習。県内の高校で唯一のチームです。

長野東 水球チーム・神山小春さん:
「1点決めたら喜びあったりするところが水球のいいところかな」


OBで現在、顧問を務める堀教諭(50)もこのプールで練習に励みました。

長野東 水球チーム顧問・堀知幸教諭:
「水球なんかすごくマイナー競技ですので、国スポ・国体がきっかけじゃなければ、なかなか強化がしづらいスポーツ」


部員の減少で一度、途絶えたチームを4年前に復活させた堀教諭。国スポの見直し論に対しては「財政負担だけでなく競技の普及などプラス効果についても考えてほしい」と話します。

長野東 水球チーム顧問・堀知幸教諭:
「国体で水球がなければ私自身もここで競技をやっていないと思いますので、お金だけじゃなくて国体があったからこういうことができたという方も考えてほしい。費用対効果と言われるとあれなんですけども、(国スポは)きっかけなので、10年20年先を見て効果を感じてもらえればいいなと」

財政負担とスポーツ振興。国スポのあり方を巡っては日本スポーツ協会で検討部会が設置されますが、4年後に開催を控える信州でも議論が必要となりそうです。

長野県・阿部守一知事:
「大会が終わった後、スポーツ文化が定着して、アスリートだけでなく、広く多くの県民がスポーツに親しめるような状況に持っていく、長野県が目指している方向性。国スポの目的や意義が何なのかということも含めて考えていくことが必要。ゼロベースでしっかり考えていく」

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