選択的夫婦別姓の導入を求める提言を経団連が10日に公表した。実現を訴えてきた一人でソフトウエア会社「サイボウズ」社長の青野慶久さん(52)はどう受け止めたのか。
世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数で日本は政治や経済への参画で低く、経済では146カ国中123位だ。このため青野さんは「経済面では少なくとも一歩は前進した」と提言を評価した。
青野さんは結婚を機に妻の姓に変えた。しかし、海外で仕事をする際に旧姓を名乗ると、パスポートと表記が異なる上に旧姓を通称として使用する習慣もないため理解されず、「ただの怪しい人とみなされた」という。
国内の生活でも旧姓を使用することに伴う苦労があり、夫婦別姓を選べる制度がないのは違憲だとして国に賠償を求める訴訟を2018年に起こした。原告の一人として最高裁まで争ったが敗訴が確定した。それでも青野さんは諦めず、選択的夫婦別姓や同性婚に反対の政治家を「ヤシの実のように落とそう」と、「ヤシノミ作戦」と名付けた運動を展開している。
円相場が34年ぶりの安値をつけ、国内総生産(GDP)で来年にはインドにも抜かれて世界5位に転落する見通しで、日本の経済力は落ちていると指摘される。青野さんは、夫婦別姓が認められないなど「人口の半分を占める女性が働きにくい社会では、経済力で勝てるわけがない」と指摘する。
さらに、「私が働き始めてちょうど30年になるが、それは『失われた30年』と重なる。この間、ずっと変化しない日本を見つめてきた」とため息をつく。
「変化への恐怖」などが日本社会が変わらない理由になっていると青野さんはみるが、「選択的夫婦別姓制度を実現できれば、それをきっかけに変化は次々に起きていくだろう」と期待する。
「『失われた30年』から脱却して変われるかどうかの節目に私たちは立っている」【菅沼舞】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。