東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)で、連合の都組織「連合東京」は、立憲民主党などが推す蓮舫参院議員=立憲民主に離党届を提出=ではなく、3選出馬を表明した小池百合子知事を「支持」する方向だ。2020年の前回都知事選に続き、立憲民主の支援候補とは一線を画す形となる。 立憲民主にとって最大の支持団体であるはずの連合が、都知事選ではなぜこうした動きを見せるのか。共産党と連携する蓮舫氏への不信感と説明されることが多いが、理由はそれだけではなさそうで…。(佐藤裕介、宮尾幹成)

外国特派員協会で記者会見する蓮舫氏=6月12日、東京都千代田区で(由木直子撮影)

連合東京は、告示日前日の19日の執行委員会で都知事選への対応を決定する。関係者によると、立憲民主や共産などが擁立した元日弁連会長の宇都宮健児氏への支援を見送った4年前と同様、小池氏「支持」となる見通しだ。

連合 正式名称は「日本労働組合総連合会」。国内最大の労働組合の全国中央組織で、加盟組合員は約700万人。業界ごとの産業別組織(産別)と47都道府県の地方組織などで構成される。1989年に社会党系の「総評」と民社党系の「同盟」などが合流して発足した。共産党系の労組がこの動きを批判して別の全国中央組織「全国労働組合総連合(全労連)」を結成した経緯などから、共産党とは一貫して距離を置いている。国政選挙や地方選挙では主に立憲民主党、国民民主党、社民党を支援する。連合東京の加盟組合員は約125万人。

◆蓮舫氏とはもともと「折り合いが良くない」

連合の芳野友子会長は5月31日、立憲民主党と共産党などでつくる「選定委員会」の要請に応じる形で出馬表明した蓮舫氏に関して、「連合は共産党とは考え方が全く違う。連携していくことは非常に難しい」と報道陣に説明した。あくまでも「共産党」との関係が問題というわけだ。

報道陣の取材に応じる連合の芳野友子会長=5月31日、千葉県内で(佐藤裕介撮影)

ただ連合が今回、蓮舫氏を応援できない背景には、属人的な事情もあるようだ。 蓮舫氏が参院議員として4選を果たした2022年の参院選東京選挙区(改選数6)で、連合は、立憲民主党の公認候補2人のうち松尾明弘氏(8位で落選)のみを推薦し、蓮舫氏には推薦を出していない。 立憲民主関係者によると、片方の候補者のみに連合推薦を付けるのは、2人を擁立する東京選挙区で2人当選を図るため、知名度で劣る方に「組合票」を集約する党の戦略という面はあるものの、そもそも連合の推薦を求めない蓮舫氏自身の意向も大きいという。 ある連合幹部は、蓮舫氏について「以前から『連合に選挙手伝ってもらうより、自分が演説に行った方が人が集まる』などと言っている。うちとの折り合いはあまり良くない」と明かす。 一方、連合と小池知事の関係は深い。 この連合幹部は「連合側の政策要請をきちんと受けてくれるし、会合にもきちんと出席してくれる。連合とはしっかり向き合ってきてもらった」と、小池都政を高く評価。連合は、2021年の都議選や2022年の参院選をはじめ、近年の東京の国政選挙や地方選挙では、小池氏が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」の公認候補を推薦することも多い。

◆蓮舫氏支援の動きを見せる労組も

現在、連合の芳野友子会長はJAM(ものづくり産業労働組合)、連合東京の斉藤千秋会長は電機連合と、いずれも国民民主党支持の産別出身。「反共」色の濃いトップのキャラクターもあって、立憲民主党が共産党に接近することへの忌避感を組織として強く打ち出す傾向があるのは事実だ。

2020年7月、都知事選で2位落選となり敗戦の弁を述べる宇都宮健児氏=東京都新宿区で(隈崎稔樹撮影)

とはいえ連合傘下の労組には、立憲民主支持で、共産も含めた野党共闘の枠組みに理解のある組織も少なくない。 立憲民主都連所属の衆院議員の1人は、「前回の宇都宮健児氏は共産に近かったが、蓮舫氏は直前まで立憲民主の議員だった候補。一部の組合員は『勝手連』的に蓮舫支援に動くだろう」と指摘。「連合は表向きは一つにまとまって小池氏をやると言うもしれないが、半分弱くらいの組合員は蓮舫氏をやってもおかしくない」とみる。 蓮舫氏自身も14日、日本外国特派員協会での記者会見で「既に私のことを支援してくださると内々に表明している労働組合の方々もいる」と話した。 

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