派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた自民党の政治資金規正法改正法案で、与野党が透明化の徹底のために「必要」と口をそろえるのが、政治資金を監督する「第三者機関」の設置だ。米国などで導入されており、識者から「ルールをいくら厳しくしても、監督機関がなければ絵に描いた餅」との声が上がるが、改正案では付則に盛り込まれただけで詳細は未定。2026年の法施行までにちゃんと設置できるだろうか。(井上峻輔)

◆自民は「各党間で協議」繰り返す

 「第三者機関の具体的な姿が明らかではない。基本的な方向性も見えない」。17日の参院政治改革特別委員会で、立憲民主党の宮口治子氏は自民の提案者の鈴木馨祐衆院議員に迫った。

参院政治改革特別委で答弁する自民党の鈴木馨祐氏

 第三者機関の設置は改正案の付則に「政治資金の透明性を確保することの重要性に鑑み設置する」と盛り込まれた。だが、その役割は政策活動費の監査が例示されているだけで、具体的な内容は「検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるもの」としか書かれていない。  与野党双方に設置自体に反対する声はなく、質疑は機関の詳細や設置時期に集中している。それでも、鈴木氏はいつものように「各党間で協議していく」と繰り返すだけだった。

◆現行の「政治資金監査人」は「ザル」

 第三者機関が注目されるのは、現在は政治資金のルールを守らせる実効性のある組織がないためだ。  弁護士や公認会計士らが委員を務める「政治資金適正化委員会」は総務省にあるが、役割は監査の指針策定などにとどまる。適正化委の研修を受けた「登録政治資金監査人」が国会議員関係政治団体を監査するものの、支出内容が適切かどうかは評価されず、関係者から「ザル」と呼ばれるほど緩い。

◆米国には民事罰を科せる組織

 米国には「連邦選挙委員会」(FEC)という独立機関があり、政治資金の収支に法令違反が疑われる場合は文書での質問や現地調査を行うことができる。法令違反があった場合に民事罰を科すことも可能だ。  審議では、与野党がそれぞれ第三者機関の理想像を提案し、公明党は「調査や勧告などより広い権限を持つ組織に」と主張。国民民主党は「政策提言や監視、違反時の勧告等を行う広範囲な機能を」と訴える。

◆権限の強さ、独立性の担保…今後の課題

 衆参両院の参考人質疑でも識者からは「早期の設置が必要」との意見が相次いだが、立法府と行政府のどちらに設置すべきかや、強力な権限の有無などで見解が割れている。政治的な中立性や独立性を守り、どういう役割を担うかは今後の課題となっている。  設置時期は未定だが、公明党や日本維新の会は改正案が施行される2026年1月に合わせるよう求めている。岸田文雄首相は17日の衆院決算行政監視委員会で「可能な限り早期に設置すべく努力する」と述べるにとどめた。 

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