客が長時間にわたる苦情や理不尽な要求を繰り返すなど、サービス業などを中心に社会問題化している「カスタマーハラスメント(カスハラ)」。同様の悩みは、市民に日々対応する自治体も抱えており、京都府内でも自衛に向けた動きが始まっている。

 南丹市は5月1日から、市役所と三つある支所にかかった全ての外線電話の通話内容の録音を始めた。市職員が市役所から外部にかけた電話も録音の対象だ。ただ、通話を録音していることを相手に知らせる案内は流れない。

 市総務課によると、録音内容は1年半後に自動的に消去されるという。録音を保管するサーバー室に入室して保存された録音を聞くには2段階の認証が必要で、同課の限られた職員しか通話記録にアクセスできない仕組みだ。

 市側によると、業務とは直接関係しない長時間の電話や、職員を怒鳴りつけるといった威圧的な電話などへの対応に苦慮していたことから導入を決めた。埼玉県越谷市や神奈川県鎌倉市などの先行例を参考にしたという。

 一方、亀岡市は6月議会に「亀岡市不当要求行為等対策条例案」を提案した。可決されれば、7月から施行される。

 市は、公正な職務の執行を妨げる「不当要求行為」として、特定の個人や法人その他の団体に対し有利・不利な取り扱いを要求▽職員採用や人事について、懲戒処分やその他の行為を要求▽職員の長時間拘束や面会要求など五つを挙げた。明らかに違法と認められたり、職員に危険が及んだりする場合には、警察への通報などを市長や職員らに義務づける。

 庁内に設置する相談窓口や対策委員会で対応方針を決定。方針を決めかねる場合には法律家など外部委員で構成する審議会で協議する。対策を講じても不当要求がやまない時は、市長は行為者の名前や行為の中身などを公表することができるとした。

 昨年度、市内のある団体から複数の市職員が夜間に呼び出されるなどした事案が起きたことが背景にある。桂川孝裕市長は「職員と公正で公平な行政の双方を守る必要がある。条例化は遅すぎたぐらいだと考えている」と話している。(日比野容子)

     ◇

 〈カスハラ〉 カスタマー(顧客)によるハラスメント(嫌がらせ)の略。商品やサービスを巡る暴言や長時間の苦情などが多いとされ、土下座の要求などにエスカレートすることもある。品質向上につながる正当な要求との線引きが難しい面はあるが、従業員を被害から守る動きは広がっている。タクシーやバス車内での運転手の氏名掲示義務も国が廃止した。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。