参院本会議で改正地方自治法が賛成多数で可決・成立し一礼する松本剛明総務相=国会内で2024年6月19日午前10時36分、平田明浩撮影

 大規模災害などの非常時に自治体に対する国の指示権を拡大する改正地方自治法は19日の参院本会議で、自民、公明両党や日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。立憲民主党や共産党などは「指示権行使の要件が曖昧で、地方分権への流れを逆行させる」などとして反対した。

 国の指示権行使は、災害対策基本法や感染症法など個別法に規定がある場合に限られていた。改正法は大規模災害や感染症など「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」が起きた際、個別法に規定がなくても、国が自治体に必要な対策を指示できるようにする。閣議決定を経て指示権を行使すると定め、事前に国が自治体から意見を聞き取ることは努力義務にとどめた。衆院の審議では、指示権行使後に国会への事後報告を義務付ける修正が加わった。

 野党は審議で具体的にどのような事態の際に指示権を行使するのかをただしたが、松本剛明総務相は「今後生じうる想定できない事態に備えるものだ」などと述べるにとどめた。19日の本会議採決に先立つ討論では立憲の小沢雅仁氏が「指示権発動の要件が極めて曖昧。乱用が懸念され、自治体への国の不当な介入を誘発し、将来拡大解釈される恐れがある」と批判した。

 2020年に大型クルーズ船で新型コロナウイルスの集団感染が発生した際、国の権限が明確でなかったことから、患者の移送調整などが難航した。これを踏まえ、首相の諮問機関である地方制度調査会が昨年末、国の指示権拡大を答申していた。【安部志帆子】

改正地方自治法のポイント

・国民の安全に重大な影響を及ぼす事態の際に、国は個別法に規定がなくても自治体に対策を指示できる

・国の指示は閣議決定を経て行う。指示を行う際に自治体に意見を求めるよう努める

・国と地方の関係を「対等・協力」と定めた地方分権の原則は維持

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