現在65歳以上の人は、給与と厚生年金の合計額が月50万円を超えると、その分の半額が厚生年金からカットされる「在職老齢年金」。

年金受給額の減少などで、より高齢者も働ける社会への転換を目的に、制度の廃止などが検討されているが、これによって得する人というのはどのくらいいるのだろうか。

16日、「イット!」取材班が向かったのは、東京・江東区の砂町銀座商店街。
道行く年金受給者に「在職老齢年金」について聞くと、なぜか、人ごとだった。

70代(年金8万円・給与15万円 / 月)「(給与と年金額が)50万円を超えている人はそんなに多くない。うらやましいですよ、50万円までいったことがない」

「在職老齢年金」は、一定の給与がある高齢者の厚生年金を減額する制度。

65歳以上の人は、給与と厚生年金の合計額が月50万円を超えた場合、超えた分の半分が厚生年金からカットされるというもの。

その「在職老齢年金」の見直しなどに関する議論が、厚生労働省の専門家部会でスタートした。

「イット!」取材班は、聞き慣れない「在職老齢年金」を受給する人を探したが...。

年金受給者(75)「(Q. 50万円超えたことは?)あるわけない。金持ちはいいんだろうね、高所得者は」
年金受給者(73)「50万円? 全然いかないね」

商店街で年金生活者100人に声をかけたが、「在職老齢年金」の受給者はいなかった。

さらに、サラリーマンの街・新橋に場所を移して探し続けたところ、会社経営者だという男性に出会った。
年収は1億円を超えるという。

会社経営者(年収1億円超)「(年金を)カットするのはおかしい。自分自身が積み立てたもの。それをカットするのは詐欺じゃないですか」

男性は、定年後も一生懸命働いていることで年金が減るのは、「働き損」などとして、「在職老齢年金」の制度に猛反発していた。

会社経営者(年収1億円超)「高額所得者でも、(年金を)もらえる権利がある。その権利をなくそうとしている。『あなたは収入が高いから(年金を)支払いませんよ』というのは別問題。見直したほうがいい」

厚労省は、議論の結果を夏ごろに公表し、年内にも年金制度の改正案をまとめたい考え。

この「在職老齢年金」を、パターン分けして見ていく。

社労士・税理士の佐藤正明氏によると、例えば、65歳以上の人で、毎月の給与が35万円、厚生年金の支給額が15万円の人は、合計が50万円になるため“基準額を超えない”ということで厚生年金は全額支給される。

一方、厚生年金は同じく15万円で、給与が45万円の人は、合計額が65万円になるため、超えた分の10万円の半分である5万円がカットされる。

この制度が廃止された場合、カットされていた5万円を受け取ることができるようになるという。

全体を見ても、2021年度時点では、該当者は約49万人で、年4500億円カットされているという。

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