首相官邸=東京都千代田区で2023年1月11日午前10時44分、竹内幹撮影

 政府は21日、経済財政運営指針「骨太の方針」を閣議決定した。社会保障分野では、公的年金制度について「働き方に中立的な制度構築を目指し、2024年末までに制度改正の道筋をつける」と明記した。パートら短時間労働者が厚生年金に加入するための企業規模要件の撤廃を挙げた。厚生労働省は要件撤廃で新たに約130万人が加入対象になると試算する。加入者を増やして老後の貧困リスクを減らしたい考えだ。

 骨太の方針では、人口減少が本格化する30年代以降も経済・財政・社会保障の持続性を確保するには、実質1%を上回る経済成長が必要だとした。実現のための柱のひとつが、女性などの労働参加率の拡大だ。人手不足が深刻化する中、政府として労働参加を阻む制度への対応を急ぐ姿勢を示した形だ。

 厚生年金は主に正社員が加入対象。短時間労働者の加入には、101人以上(10月からは51人以上)の企業で、週20時間以上働き、月収8万8000円以上などの要件を満たす必要がある。政府は多様な働き方に対応するために企業規模要件の撤廃を目指すが、保険料は労使折半のため中小企業などへの支援を求める声もある。

 個人事業所に勤める人の適用拡大も記載した。現在は従業員5人以上の製造業など17業種に限って加入を義務づけているが、業種要件の撤廃に向け「結論を得る」とした。

 パート労働者の年収が一定額に達すると社会保険料の負担が生じて手取り収入が減る「年収の壁」にも触れた。「壁」を意識せず働くことができるよう制度見直しに取り組む姿勢を示した。ただ、巨額財源が必要な基礎年金の給付水準の底上げの記載はなかった。

 年金を含む社会保障について、政府は持続可能なものとするため、応能負担を徹底する方針だ。現役世代・高齢世代の給付・負担構造を見直し、すべての世代で支え合う社会保障の構築を目指す。

 一方、毎年の予算編成で焦点となる社会保障費の抑制幅については言及がなく、財政全体の枠組みの中で基本的な考え方が示されるにとどまった。物価高や賃上げへの対応も念頭に「各年度の予算編成過程で検討する」と明記された。

 全世代を対象にしたリスキリング(学び直し)や、ジョブ型人事(職務給)などに取り組む労働市場改革も推進。国民会議の開催を検討するとした。

 政府は同日、新しい資本主義実行計画の改定版も閣議決定した。【宇多川はるか、神足俊輔、古川宗】

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