21日に事実上閉会した第213通常国会は、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた「裏金国会」の様相を呈し、実態解明や、再発防止に向けた政治資金規正法の改正が最大のテーマとなった。他の多くの法案は政府・与党ペースで進んだが、規正法改正を巡っては与野党の修正協議を含めて大荒れに。岸田文雄首相は法改正にこぎつけたものの、野党の賛同は得られず、幅広い国民合意の形成には至らなかった。
「我々の政策を大きく前進させることができた。改めて感謝申し上げる」
首相は21日、国会内で開かれた自民党代議士会で、今国会での成果をそう強調した。今国会では、政府提出法案62本のうち、海洋再生可能エネルギー発電設備の海域利用促進法改正案を除く61本が成立した。主な法案としては、少子化対策を拡充する改正子ども・子育て支援関連法や、機密情報の保全対象を経済安全保障分野に広げる重要経済安保情報保護・活用法などが成立した。
最大の焦点となったのが裏金問題を巡る論戦だ。衆院では2月、2009年以来となる政治倫理審査会が開催され、首相も出席した。3月には参院でも初めて開かれ、衆参で計10人が弁明したが、裏金が始まった経緯は不明のまま。安倍派幹部の発言内容に食い違いが生じるなど実態解明には至らなかった。
裏金に関与した議員に対する自民党の処分を経て、後半国会では、政治資金規正法改正案を審議するために設置された政治改革特別委員会で与野党の攻防が本格化した。
規正法改正を巡っては、自民、公明両党が法案をとりまとめられず、自民は5月、単独で法案を提出。参院で単独過半数の議席を持たない自民は、衆院での採決時に公明や日本維新の会の主張を取り入れた修正案を自民、公明、維新などの賛成多数で可決させた。しかし、参院では、自民が調査研究広報滞在費(旧・文書通信交通滞在費)の今国会中の見直しに消極的だと反発した維新が反対に転じた。全会一致を目指す議員立法にもかかわらず、野党の賛同を得られない結果となった。
裏金問題を背景に、今国会ではたびたび異例の対応もとられた。1月には通常、国会召集日に行われる首相の施政方針演説が後回しにされ、先行して「政治とカネ」をテーマとする衆参予算委員会の集中審議が実施された。3月には与野党の「日程闘争」の末、予算案の衆院通過のために「土曜国会」が開かれた。今月19日には、岸田政権で初となる党首討論も3年ぶりに開かれた。
多くの具体策が先送りされた改正政治資金規正法のほかにも、今後、与野党間の調整の難航が予想される課題が残った。旧文通費は今国会での見直しが見送られ、安定的な皇位継承に向けた皇族数確保を巡る協議も、額賀福志郎衆院議長が目指した今国会での意見集約は間に合わなかった。【川口峻】
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