東京都知事選のポスター掲示板

過去最多の56人が立候補した東京都知事選の選挙ポスター掲示板に、同じ人物やデザインのポスターが多数張られ、有権者に困惑が広がっている。政治団体「NHKから国民を守る党」は、団体に寄付をした人の作ったポスターを掲示板に張っているとしており、制度の隙間をついたとの意見も。識者は「規制を考えていく必要がある」と指摘する。

「カワイイ私の政見放送を見てね」。中野区役所前の掲示板には、さまざまな人物の画像とともに、デザインの同じピンク色のポスターがずらりと張られていた。QRコードも記載され、読み込むと特定の交流サイト(SNS)の画面に誘導される。

画像の人物のほとんどは選挙と無関係とみられ、同区の男性会社員(57)は「広告なのか、候補者ポスターなのか分からない。違和感を覚える」。東京・秋葉原付近では、立候補していない女性キックボクサーとみられる人物のポスターが並び、スマートフォンで撮影する姿も。

総務省によると、ポスターで他の候補者の選挙運動をすることや、虚偽があった場合は処罰の対象になる。一方で、内容を直接制限する規定はなく、事前のチェックもない。林芳正官房長官は21日の記者会見で「(掲示板は)候補者以外が使用できるものではない」と発言。松本剛明総務相も「公選法上、掲示の権利を売買するものとはされていない」と述べた。

東京都選挙管理委員会には、21日までに千件以上の苦情や問い合わせが寄せられた。同一のポスターが張られていることに関して「何なのか」などとするもので、担当者は「電話がひっきりなしに鳴っている」と話す。

法政大大学院の白鳥浩教授(現代政治分析)は「掲示板は候補者の政策や顔、人となりといった情報を有権者に提供するためにある。法に触れないとしても趣旨から外れた行為だ」と批判する。

その上で「表現の自由を考慮すれば直ちに法改正までする必要はないが、選挙運営の規則などで禁止していくべきだ。時代の変化に合わせて選挙の在り方を見直す時期が来ている」と述べた。

団体の立花孝志党首は21日の記者会見で、設置費用がかさむ掲示板をなくせば供託金の額が下がり、政治参加がしやすくなると主張。今回の取り組みは「非常に大きな問題提起だ」と説明した。〔共同〕

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