候補者の街頭演説を聞く有権者ら=16日午前、東京都江東区(岩崎叶汰撮影)

16日に告示された衆院東京15区補選(28日投開票)は、与党候補不在の中で過去最多9人が立候補を届ける混戦となった。選出議員が2人続けて東京地検特捜部に逮捕される事態に揺れた東京15区では、2度の東京都江東区長選と合わせてわずか約2年半で4度目の選挙。こぞって「クリーンな政治を」と気炎を上げるが、度重なる不祥事と選挙で有権者が向ける視線は冷たい。

現職2人が

「政治とカネの問題を今回の選挙で断ち切っていく。江東区に正常な政治を取り戻そう」

小池百合子都知事の支援を受け国民民主党とファーストの会から推薦を受ける作家で無所属新人、乙武洋匡氏(48)はJR亀戸駅前での第一声で声を張り上げた。

補選で各候補が「政治とカネ」を意識した選挙戦を展開するのは、選出議員が続けて逮捕された経緯があるからだ。

その一人、無所属元職の秋元司氏(52)は自民党で現職を3期務めたが、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件で収賄などの罪に問われ、今年3月には2審東京高裁から懲役4年などの実刑判決を下された刑事被告人の身だ。

東京メトロ東陽町駅前で演説した秋元氏は経済政策や安全保障に触れたが、「こと私(の事件)に関しては検察のでっち上げだ」と約15分間の大半を身の潔白に割いた。

事件後の令和3年衆院選で出馬を断念した秋元氏に代わり、当選した柿沢未途氏(53)=自民が追加公認=は、昨年4月の江東区長選を巡る公職選挙法違反事件で逮捕され、議員辞職に追い込まれた。

自公なき戦い

高まる政治不信に国政の混乱が拍車をかける。自民の派閥政治資金パーティー収入不記載事件で逆風が吹き荒れる中、自民、公明は独自候補擁立を断念し、推薦や支持も出せなかった。

好機と見る野党系候補は勢いづく。日本維新の会から出馬した元食品会社員の新人、金沢結衣氏(33)=教育推薦=は同区内の富岡八幡宮で、「江東区は明るい話題であふれてほしい。古い政治か、クリーンで国民のための政治か」と訴えた。

立憲民主党から出る元江東区議の新人、酒井菜摘氏(37)は東京メトロ豊洲駅前で「自民に政治を任せるわけにいかない。大好きな街だからこそ汚職が広がっていることが許せない」と力を込める。

令和元年の参院選比例区で立民から当選し、その後、離党した前参院議員の新人、須藤元気氏(46)は東陽町駅前で演説し、出馬した理由を「腐りきった政治をぶっ壊し、完全無所属で勝利し、行き詰まった政治に終止符を打ちたい」とぶち上げた。

「誰でも一緒」

一方、有権者の熱量は必ずしも高くない。同区のコンビニ店長、原田浩明さん(34)は「適切にお金を使える誠実な人が選ばれてほしい」と話すが、同区の会社員女性(36)は「問題が続き、誰でも一緒ではと思うようになった」。別のコンビニの女性店員(56)は「投票しようと思える人が一人もいない」とため息をつく。

参政党新人の看護師、吉川里奈氏(36)は「世襲やお金ではない新しい政治を」と訴えた。

衆院東京15区補選は他に諸派新人の弁護士、福永活也氏(43)▽諸派新人のIT会社経営、根本良輔氏(29)▽諸派新人の大学客員教授、飯山陽氏(48)-も出馬し、第一声を上げた。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。