衆院東京15区の補欠選挙が告示され、公認候補の応援演説を行う立憲民主党の泉健太代表=16日午前、東京都江東区

衆院東京15区補選(28日投開票)は16日告示され、9人の候補者による舌戦が繰り広げられた。ただ、自民党の派閥政治資金パーティー収入不記載事件など「政治とカネ」の問題に集中し、政策論争は鳴りを潜める。与党候補が不在の選挙戦では政策面での争点は定まらず、有権者からは地元の声が国政に届くのか不安の声が上がった。

「真相の説明や処分が遅れに遅れている。岸田文雄首相は本気で政治改革をまとめる覚悟があるのか」

立憲民主党が擁立した候補者の応援に駆け付けた同党の泉健太代表は、東京メトロ豊洲駅前で候補者と並んでマイクを握り、自民党を厳しく批判。同じ候補者を支援する共産党の田村智子委員長は東京メトロ東陽町駅前で、「自民党の政治を終わらせるには野党が一致団結する必要がある。市民の緊急の要求は政治とカネの問題を根っこから断ち切ることだ」と糾弾した。

日本維新の会の馬場信幸代表も、富岡八幡宮前(江東区)で第一声を行った同党が擁立した候補者の横で「この東京15区は残念ながら悪い意味で全国から注目されている。政治とカネの問題をクリーンにしていく」と意気込んだ。国民民主党の玉木雄一郎代表は、JR亀戸駅前で同党が推薦する候補者の応援に声をからし、「クリーンな政治、賃金のアップ、ケアラーの支援を一緒にやりたい」と訴えた。

いずれの野党陣営も、政治とカネの問題の解決を中心に訴えたが、肝心の自民党候補がいないため論戦になりにくい。選挙戦というよりも国会論戦の延長線といった形に近く、各候補者が訴える政策の埋没感が否めない。こうした状況に有権者からは、「地元不在」と嘆く声が上がる。

江東区の無職、己波(みなみ)堅太郎さん(86)は「前回選挙は公職選挙法違反罪で有罪判決を受けた柿沢未途氏が出ていたから分かりやすかったが、今回は、知っている顔が一人しかいない。選挙に行くことは行くが、誰に入れてよいのか…」と戸惑った様子を浮かべる。

同区の60代女性は「ほとんどの候補者が江東区の外からやってきた人。地元を知らない人が、私たちの声を国政に届けるのは無理だと思う」と述べた。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。